有給休暇の前倒し&つながらない権利も!“休み”を大切にする理由とは?【世界の働き方事情・オーストラリア】
海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、オーストラリアの休暇事情を現地在住ライターが紹介します。
「仕事とプライベートのバランスを大切にする文化」が根付くオーストラリア。というのも、この国では「休むことが仕事の一環」と見なされており、休暇の取り方も実に魅力的。今回はそんな “従業員ファースト” ともいえるオーストラリアの、お休み事情をお届けします。
オージー達のバケーション事情
オーストラリアでは、バカンスとして長期休暇を取るのは当たり前。年末年始やイースターホリデーでは2〜3週間、夏のホリデーシーズンは1カ月以上休みを取ることも珍しくありません。
ビーチでのんびり過ごしたり、キャンプに出かけるなど、アウトドアを満喫するのが典型的。自宅でリラックス派は、庭でバーベキューをしたりプールで過ごすなど、家族との時間を楽しんでいるようです。また「オージーはDIYが大好き」、ホリデー中は家の改装に精を出す人も多いため、ホームセンターが混雑する時期でもあります。
有給休暇の前倒しも可能!
筆者がオーストラリアで暮らしていて驚いたのは、企業によっては「有給休暇を前もって使わせてくれる」ケースがあるということ。もちろん前倒しで取得した有給休暇は、将来、発生分から差し引かれることにはなりますが……。日本ではあまり聞いたことがないのではないでしょうか? これには従業員の満足度を高め、“優秀な人材を長く企業に引き止める狙い” があるようです。
休んで給与が増える!?「Annual Leave Loading」
オーストラリアでは休暇中、通常の給料より多く支払われるケースがあります。「Annual Leave Loading」と呼ばれる制度で、有給休暇中に受け取れる手当てのこと。通常の給与に17.5%が加算された金額を受け取ることができるんです。例えば週の給与が$1,000ドルだとしたら、有給休暇を取ると週に$1,175ドルが支払われることになります。
これは従業員が経済的な負担を感じることなく、安心して休めるよう設けられたもの。休暇中はボーナスや残業代などが減少する可能性があることから、これらを補填する目的もあるようです。
その結果「積極的に有給休暇を取得する従業員が増加」→「休暇でリフレッシュ後は業務の生産性も向上」とwin-win。企業がいかに従業員の休息を大切に考えているかがわかりますよね?
新たな法制度「つながらない権利」とは?
オーストラリアでは2024年8月、「つながらない権利(Right to Disconnect)」を認める法律が施行されました。これは従業員が、「就業時間外の業務連絡を拒否できる」というもの。もちろん役職や責任の程度、連絡理由や方法なども考慮されるため、すべての連絡を無視できるわけではありません。
しかし、この法律によりワークライフバランスが大幅に改善され、従業員の心理的安全を確保する効果があるといわれています。「仕事から離れる時間を持つことで、ストレスの軽減・職場の生産性の向上につながる」といった専門家の意見も多いようです。
一方、企業側はこの大きな変化に、就業体系や職場文化の見直しを迫られている状況。適応には一定の時間がかかりそうですが、今後の動向に注目が集まっています。
*この権利は現在、小規模企業に対して12カ月の適用猶予が設けられているほか、警察など特定の職種・状況下では適用外となります。
オーストラリアでは「Happy Worker(幸せな従業員) = Productive Worker(生産性の高い従業員)」と考えられており、従業員を大切にする職場環境が多いと筆者は感じます。どの企業も優秀な人材確保に力を入れており、そのために魅力的な福利厚生を取り入れる企業も少なくありません。世界で働き方改革の波が広がる中、その先陣を切るオーストラリア。
次回はこの国の「副業事情」をお伝えします、お楽しみに!
[参考]
Annual leave in advance
Annual Leave Loading
Right to Discconect