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長澤まさみのCMでも注目!中国製電気自動車は日本で売れるのか?

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売り上げを拡大する中国製EVのイメージ

Image : Shutterstock.com

インターネットやSNSで世界中の情報がリアルタイムで手に入る時代、オンライン会議で日本はもちろん、海外のどこにいてもコミュニケーションできるのが当たり前となった。ビジネスパーソンなら海外のビジネス関係のニュースも押さえておきたい。

そこで、各国の情勢に精通しているピエール・パパンさんに、世界で存在感を拡大しつつある中国製電気自動車(EV)について解説してもらった(以下、ピエール・パパンさんの寄稿)。

中国車の輸出台数が5年前の5倍以上に

日本国内で走っている自動車のほとんどは日本メーカーの車で、輸入車でもベンツやフォルクスワーゲン、BMWなどのドイツ車が多くを占めており、輸入車の3台に2台以上はドイツ車といわれている。一方、中国製自動車のシェアは、わずか0.78%にすぎない。しかし、近年世界では中国車が大きくシェアを伸ばしているのだ。

中国製自動車の輸出台数は、2020年までは毎年100万台前後だったが、この5年間で5倍近くの約491万台にまで伸びており、その多くが電気自動車だ。中国メーカーは政府の補助金を活用し、安い電気自動車を大量に生産し、それを東南アジアや欧州、アフリカなど世界各国に売りさばいている。

欧米では中国製電気自動車への関税引き上げ

しかし、米国や欧州では安い中国製電気自動車が多く流入することで、GMやフォルクスワーゲン、ベンツなどが国内で売れなくなると心配の声が広がっているのだ。

たとえば、米国は2024年5月、中国製電気自動車が国内へ流入するのを防止するため、それに対する関税を現行の4倍にあたる100%に引き上げる方針を発表した。

また、EUも7月、中国製電気自動車に対する関税を引き上げる方針を明らかにしている。現行の10%に加え最大37.6%の関税を上乗せする政策を発表。追加関税率はメーカーによって異なるが、現在のところ上海汽車に最大の37.6%の追加関税が課され、吉利汽車に19.9%、BYDに17.4%の関税が上乗せされる。

これに対して中国は、強く不満を示す一方で、欧米に輸出してきた電気自動車を、その他の国々への輸出にシフトする可能性も示唆している。

日本で中国製電気自動車は売れるか

現在のところ、日本は米国や欧州のように中国製電気自動車に対する関税を引き上げる方針ではない。というのも、日本が欧米と同じように中国製電気自動車に対する関税をアップさせれば、中国がパソコンやタブレットなど日本向け製品の輸出をストップする可能性があり、日本はなかなか中国に対して強くものが言えないからだ。

しかし、中国製電気自動車が大量に日本に入ってもきても、それが爆売れするかはわからない。最近は、女優の長澤まさみさんが中国EV大手BYDのCMに出演して話題となっているが、これによって一気に爆買いが起こるとはいえないだろう。

また、世界では中国製品を利用することで個人情報が漏洩することへの警戒感が広がっている。2024年4月には米国で、中国発の動画共有アプリ「TikTok」の規制法案が可決成立した。

日本では、もともと輸入車の比率は低く、その中でもドイツ車が長年人気を維持してきた。そのため、中国車のような新しい存在は受け入れられるのに時間がかかると思われる。

[文/ピエール・パパン]

[参考]
2023年度輸入車新規登録台数(速報)|日本自動車輸入組合
急拡大する中国新エネ車輸出、欧州やアジアなどでの競争激化 | 中国EV・車載電池企業の海外戦略 – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ
中国、2023年の自動車販売台数は初の3,000万台超えも、内需に弱さ | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ
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フランスのパリやカンヌなどに留学し、フランスやその他の国々を旅し、ライティング活動を行っている。

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