【世界の働き方事情・中国】ビデオブロガーやゲーム脚本家がZ世代に人気!就職難の中でフリーランスも増加
海外在住ライターや海外で働いた経験を持つライターが、各国の仕事事情を紹介するシリーズ「世界の働き方事情」。今回は、近くて遠い国・中国の職業事情を現地の日本人学校に教員として勤務した経験のあるライターが紹介します。
14億人の人口を抱え、世界第2位のGDPを誇る中国。日本の隣国であるにもかかわらず、現地の人々の就職事情については知らない人が多いのではないでしょうか。この記事では、中国の若い世代の職業観や働くトレンドについてお伝えします。
中国の就労人口は7億人以上
国立研究開発法人科学技術振興機構の2020年の調査によれば、中国の労働力人口の総数は7億8,392万人。産業別でみると、
・第一次産業(農林水産業など) 1億7,715万人
・第二次産業(製造業など) 2億1,543万人
・第三次産業(サービス業など) 3億5,806万人
となりました。
中国国家統計局よれば、2022年の都市部における平均年間賃金のうち、国有企業や集団企業に務める人の平均は11万4,029元(約220万円)、私営企業に務める人の平均は6万5,237元(約126万円)との調査結果があります。
一方、農村部の平均賃金は2万1,691元(約42万円)となり、都市部と比べてかなり低い傾向がありますが、近年は改善傾向にあるようです。
多くの企業では、日本と同じように給料は月給で銀行に振り込まれます。また、春節(旧正月)前に「年終奨」と呼ばれるボーナスが支給されるのが一般的です。
2000年代生まれの世代の職業観
中国では、特定の年代を「〜后」と表す呼び方があります。「后」は日本語の「後」という漢字の簡体字。たとえば、現在の22〜24歳は2000年代生まれなので、「00后」と表されます(ちなみに筆者は1980年代生まれなので80后)。Z世代でもある彼らは、どのような職業観をもっているのでしょうか?
求人情報サイト「前程無憂」が発表した「大学卒業生職業選択インサイト報告2022」によれば、00后(2000年代生まれ)の卒業生の73.3%が「機関・企業」に就職を希望し、40%近くが「国の機関などの仕事に就きたい」と回答しました。
また、フリーランスとして働くことを希望した学生は15.3%もいたそう。大卒者の10人に1人がフリーランスを選択するのは、新卒一括採用が主流の日本と比較すると多い印象を受けます。
さらに、同報告書によれば、新しい分野の職種で人気の職業には「ビデオブロガー/エディター」「マーダーミステリーの脚本家/Webライター」「トレンド玩具デザイナー」が並びました。
特に、目を引くのがマーダーミステリーの脚本家。マーダーミステリーは、殺人事件を題材にした推理ゲームで、参加者全員に役割が与えられ、台本に沿って役柄を演じながら犯人を探します。
本来は対面型のゲームが基本ですが、コロナ禍を経てオンライン方式も普及しました。中国独自のエンターテイメントに関する職業が注目されています。
「寝そべり族」が生まれた背景
JETRO(日本貿易振興機構)によれば、2022年の大学卒業者の人数は前年比18.4%増の1,076万人を越え、人数と増加幅ともに過去最高を記録しました。一方、大卒者への求人数は、新型コロナウイルスによる経済への影響で減少しており、就職難が続いています。
「内巻」と呼ばれる過剰競争が起きる中で、就職への意欲や欲望が減退し、ゆとりのあるライフスタイルを望むZ世代の「躺平(寝そべり)」が社会現象として注目されました。日本でも記事に取り上げられたことが多かったので、聞いたことがある人もいるかもしれません。
特に都市部においては、家賃や物価の高騰もプレッシャーとなっており、住宅購入や結婚を諦める人もいるそうです。一方で、一人っ子の割合が高く、彼らの親元の多くが裕福であることも、この現象を後押ししているようです。
中国政府は「寝そべり主義」を問題視していますが、卒業後にフリーランスを選択する学生が増えてきていることから、中国独自の新しい働き方のトレンドが生まれてくるかもしれません。
かつて日本も、1991年のバブル崩壊に端を発した経済不況によって、就職難が続いた時期がありました。1993年から2005年頃までは「就職氷河期」と呼ばれています。終身雇用制度も崩れていくなかで、非正規雇用が増加し、転職も珍しいことではなくなっていきました。
過剰競争や社会的な不安から、新しい働き方が生まれていくのは日本も中国も似ているように感じます。
次回は、中国の通勤事情や労働時間など、働く環境にスポットを当てて紹介します。
[参考]
人民網日本語版
国立研究開発法人科学技術振興機構
JETRO