企業型確定拠出型年金の「落とし穴」。絶対に知っておくべき3つのリスク
企業型DCのメリットは?
――「一部の人」が注目している企業型DCのメリットは?
大野:企業型DCの最大のメリットは「会社員が働く環境が変わっても資産運用しやすいこと」。つまり、資産の移管が比較的スムーズに行えることだと考えています。実際、退職後6か月以内であれば、手数料をかけずに「①企業型DCから企業型DCへ」、もしくは転職先などに企業型DCがない場合は「②iDeCoなどに移管」できます。
さらにデメリットとして挙げた「原則60歳まで解約(途中引き出し)ができない」ことも、視点を変えてみれば超低金利時代や物価高騰も続く今だからこそ、老後資金として確実に備えられる確定拠出年金は「お守り」としての役割もあるでしょう。
それにもかかわらず、112万人の方が放置している現状はあまりにももったいないと感じています。企業型DCの放置による損失は生活に支障をきたさない小さな金額かもしれませんが、「分からないから放置する」「面倒だから後回し」という姿勢では金融リテラシーは高まらないし、老後の資産を増やすことも困難です。
終身雇用制度が崩壊し、人材の流動化が激しくなると予想されている今、企業が外部講師を招いて従業員の金融リテラシーを高める取り組みはもちろん、個々の会社員が自主的に状況を把握して行動する必要性を再認識しなければならないのではないでしょうか。
<取材・文/藤冨啓之>
【大野翠】
大手金融機関にて営業職に従事したのち、2016年に独立系FP/宅建士として個人事務所開業。FP歴11年のキャリアを持ち、お金と不動産に関するコンサルティング・マネーセミナー企画運営がメイン業務。このほか、専門家として年間240本超の記事執筆および監修。宅建士・FP技能士の資格取得講師としても活躍