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新卒生え抜きに“出世”で負けた29歳営業マンの苦悩「実力主義の会社なのに」

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「調整給」を支給することも

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 この他にも、前職給与が維持されるように「調整給」を支給することもあるようだ。これは、中途採用で入った人を格付ける等級は役割や能力相応にするものの、その等級で支払える額を超えて支給する方法だ。給与に合わせて高い等級に格づけるものではない。

「調整給で特に多いのは、この仕事ができる人がその会社でいないがために、特別の待遇を与えるといった意味合いのケースです。入社後にその人の実力、実績と賃金との間に大きなミスマッチがある場合には、話し合いのうえ、賃金を下げ、同じ等級の新卒の社員らと同じ額にすることもある

 一方で、調整給支給の期限を例えば『3年間』とする場合もある。さらには、その期限が退職時にまで及ぶケースもある。この場合は実力と賃金との間に大きなミスマッチはなく、期待に応える働きをおおむねしていることが前提になるでしょう」

期待に沿えないと退職勧奨を受ける?

 久保さんはこれから中途採用で入る人には、採用時に会社の求める役割や働き、成果・実績などの期待値を確認し、すり合わせを丁寧にすることを勧める。これらがきちんとできていないと、ミスマッチが起こりうるからだという。

「20代でリストラに遭う可能性は低いが、期待に沿えない働きが続くと、退職勧奨を受ける場合はあります。ミスマッチが生じるのは、雇う側にも問題はあって、例えば、一流の大企業でも20代を中途採用で雇う時にその目的を漠然と『組織の活性化』と捉えている場合、うまくいかない時がある

 特に一流の大企業のように新卒採用者が多い、いわば血の濃い風土の場合、その人をどのようなに育成していこうとするのか、明確な考えがないと実力があったとしても発揮できない可能性もあります」

 そのような中、足場を固め、活躍するために大切なのは、謙虚な気持ちで自分を磨いていくことなのかもしれない。

<取材・文/吉田典史>

【久保博子(くぼ ひろこ)】
大手生命保険会社を経て、2005年から株式会社トランストラクチャで人事コンサルタントとして大企業、中堅企業やベンチャー企業の組織・人事コンサルティング業務に携わる。人事制度設計を始め、グループ人事管理の仕組みやセカンドキャリア制度、研修企画などを担当する傍ら、2011年から人事総務部長として採用や社内教育にもかかわる。

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数

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