元ユニクロ上席執行役員が明かす「恥ずかしい失敗」と「悩み相談のコツ」
顔から火が出るほど恥ずかしい思いも
――物流に関する本を読んで知識を詰め込んだそうですが、どのくらいの時間を要したんですか?
神保:役員に就任することが決まった時点で、すぐに100冊くらい専門書を大人買いしました。その中でも参考になる本を7~8冊、1か月ほど読み返しましたね。でも結局、実際にやってみないとわからないじゃないですか。
例えば物流用語でコンテナに荷物を「積み込む」ことを「バンニング」と、「積みおろす」を「デバンニング」と呼ぶのですが、職場ではデバンニングを「デバン」と略していたんですね。ある時、港の混雑によりユニクロ商品のデバンニングがうまくいかず、物流全体に悪影響が出ていたんです。そこで社員たちが「デバンが問題だよね~」とずっと言っているんです。
そしてある社員が「神保さん、このデバンの問題なんですがどう思いますか?」と言われたときに、私は役員として“自分の出番”なんだと思ってしまって、真顔で「私の出番ということですね。私が直接、港湾の偉い方に交渉したほうがいいんですかね?」と言ってしまったんです。そうしたらもうみんなは大爆笑というか、呆れ果てるような空気になりました(笑)。
当時のみんなは本当にがっかりしたでしょうし、不安になったでしょうね。「デバンってそういう意味じゃないんですよ」と言われて、顔を真っ赤にしたことを覚えています。簡単にいうと、当時の私の知識はそんなレベルだったんですよ。今でも“出番”のエピソードは思い出すだけで顔から火が出そうです。
部下は最高の家庭教師
――考えるだけで恐ろしいですね。そこから役員としてどう部下に接したのでしょうか?
神保:もう途中で腹をくくりました。彼らと会話をするための心の支えとして、参考書は支えにはなったのですが、一番早いのは現場に一緒に行くことなんだなと思いました。
役員として香港や上海、オランダなど、部下が出張するときにどこでもついて行ったんです。私にとって部下は現場がわかる最高の家庭教師なので、部下のやりとりを実地で学ばせてもらいながら、空港のラウンジや食事の時間に溜まった質問をさせてもらいました。そういうときは、仕事以外の話も出てくるので、それを繰り返しているうちに、彼らと“同じ釜の飯を食い始めた感覚”を持てるようになりました。
――当時は社長直下のプロジェクトにも携わっていましたが、柳井正さん(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長)の印象は?
神保:私は社長直轄プロジェクト担当という立場でもあり、会社の組織変革などについて柳井さんと直接話す機会が多くありました。特に。物流改革が全社の最重要経営課題になっていたので、ほぼ毎日、柳井さんと打ち合わせをしていました。