「豆柴の大群」仕掛け人たちが語る、自由を勝ち取るための仕事術
僕は「コスパが悪い」やり方が好き
――『悪企(わるだくみ)のすゝめ』では、ヒット作が出るまでには、出会いや努力の積み重ねのほかに、「パズルがたまたまバチッとはまった」という実感にも触れていました。いわく、〈99%の運と1%の準備〉とのこと。
渡辺:よくあるじゃないですか、「あんな感じのものがつくりたいです」って。でも、例えば“誰それみたいな映像が撮りたい”として、同じ機材を揃えて、同じ照明の当たり具合にしたらうまくいくのかっていうと、多分違う。表面的に同じ画は撮れるかもしれないけど、それが本当に魂のあるものなのかっていうと、ちょっと違う話になってくる。
見えているものの裏にはいろんな蓄積があると思うんですよね。僕は深みがあるものを作る、ということをいちばん大切にしたい。……そういう意味で、僕は「コスパが悪い」って言われるやり方が好きなのかもしれません。
――〈1%の準備〉を、常に怠らないということですね。藤井さんも同書のなかで〈タイミングが来たときにちゃんとやれる体力や能力は準備しておく〉、〈準備が無駄になるのは当たり前〉と。
藤井:僕も同じ考えです。同じような中身と同じようなデザインで、そこそこちゃんとしている工業製品的なものをたくさん作れるほうが売上高は多いかもしれないけど、僕が得意なのはそっちじゃない。一個一個手作業で丁寧に作るほうが向いてるし、好きですね。
言い訳を考える時間は無駄
――“大人少年”を自認するお二人ですが、今の学生や新入社員に思うことはありますか?
渡辺:僕の会社も去年から新卒を採ってるんですけど、うーん……“下手っぴ”だなと思うことは多いかもしれないです。例えば、この間の話でいうと、牧場で僕が撮りたい映像があって、牧場を押さえるように指示していたんです。で、「牧場って押さえた?」って聞いたら、やってないならそう言えばいいのに、「牧場~~………」っておうむ返しして伸ばしちゃって答えないんです(笑)。
たぶん、そこで言い訳を考えてるんですよね。もうやってないんだなってわかるんだけど、僕が「できてるのできてないの、どっちなの?」ってもう一度聞くと、ようやく「できてないです」と答える。「それを先に言って」っていう。「牧場……」の時間、もったいないからって(笑)。
藤井:ハハハハハ。