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女性社員のいじめで退職寸前の29歳男性「こんな会社、アホらしい」 プロも悩む難しい選択

学び

取材を終えて「実に難しい問題だ」

ハラスメント

 これは今回の取材ではなく、私のこれまでの取材経験をもとに述べたい。男性が今回のパワハラを社外の第三者機関(労働基準監督署、労政事務所、労働組合、裁判所など)に持ち出し、法的な争いをする場合は、パワハラを受けている事実を記録しておくことが大切になる。

 そのひとつが、女性社員らが自分に発する言葉だ。スマホのアプリやICレコーダーで録音ができるはずだ。一定の期間(数か月~数年)をかけて会社と争い、会社がパワハラの事実を認め、お詫びし、解決金を払ったとしても、29歳という年齢や在籍期間(約2年)、パワハラの中身などを考慮すると、多くとも基本給の数か月分くらいか、さらにはもっと少なく、数万~10万円前後になるかもしれない

 争った事実が、転職活動やその後にマイナスの影響を与えることもあるかもしれない。わずかな金額を得るためにキャリア形成において大きな傷を受けるよりは、縁を切ったほうがいい相手(女性たち)や会社であるのかもしれない。

 男性がどうしても納得できないならば、私は積極的にはおすすめできないが、リーダー格の女性か、人事部の責任者に「パワハラへの会社の対応には納得できず、不本意な退職である」旨を文面などで伝えてもいいのかもしれない。おそらく本人が求めるような回答や反応はないだろう。弁護士を通じて女性に内容証明郵便を送り、抗議の意思を伝えることもできるが、これも納得できるような反応はないだろう。

 空しく、切ない結末だが、それでもなおも、争うのか。実に難しい問題だ。

<TEXT/吉田典史>

【大津章敬(おおつあきのり)】
1994年から社会保険労務士として中小企業から大企業まで幅広く、人事労務のコンサルティングに関わる。専門は、企業の人事制度整備・ワークルール策定など人事労務環境整備。全国での講演や執筆を積極的に行い、著書に『中小企業の「人事評価・賃金制度」つくり方・見直し方』(日本実業出版社)など

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数

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