夜のプロントは「レトロ酒場」に。カフェ市場寡占化への危機感が背景に
年配者には懐かしく、若者には新鮮さを
夜は居酒屋、焼肉、寿司、中華料理など選択肢は山ほどある。その中で二毛作のプロントが選ばれるためには、昼と夜の業態の“振れ幅”の大きさも必要だと片山氏。
たしかに「ここはランチでパスタを食べたお店だ」と思ってしまえば、自然と他店に目が向くのは無理からぬ消費者心理だ。まったく違うお店が突如出現したかのような意外性に、興味をそそられて立ち止まってしまうだろう。
若い人に「パスタのお店かと思ってたけど大人のカフェだよね」「プロントの夜っておもしろいね」と思ってもらいたいと片山氏は話す。しかしその一方で長年プロントのファンだった、おもに年配の客層が離れていくことも危惧したという。
「以前のカフェ&バーだったプロントに愛着がある、1人で飲める昔のプロントが好きだった、というお客さまもいらっしゃるでしょう。そういったお客さまが離れてしまう怖さがあったのは事実です」
その点はどうクリアしているのだろうか。18時になると店内のメニューが一変する。テーブルに置かれたメニュー表はグラフィックにこだわっていることがよくわかり、まるでガード下の酒場のような印象だ。アジフライ、ハムカツ、タコサンウインナー、チューリップカラアゲ、ナポリタンなど、ノスタルジックなメニューが並ぶ。「クリア珈琲」というちょっと珍しいサワーも目を引く。
「喫茶店のメニューと酒場のメニューをできるだけ多くピックアップし、そこからニーズや価格、オペレーションなどを考慮しながら、定番メニューをおさえつつ絞りこんでいきました」
こだわった「メニューのネーミング」
これなら年配の人は懐かしさを感じることができ、若い世代にとっても新鮮さがある。価格も手ごろなため、今まで通りひとり飲みでも楽しめそうだ。
各メニューのネーミングやキャッチフレーズにもこだわりがある。
「カフェ感が強い“パスタ”という言葉は使わず“スパゲティ”にしてあります。メニューを見ただけで楽しめるようキャッチフレーズにもこだわりました」
たしかに「ノリノリちくわの磯辺揚げ」「オカンが作るハムエッグ」「金持ちぼんぼんの生ハムピザ」など、ちょっとユニークなものが目立つ。メニューを見ながら仲間内で「これ、どんなピザなんだろう?」と盛り上がれるだろう。
「メニューにコミュニケーションのきっかけを埋め込んでいるんです。『これはどんなピザなんですか?』という具合に、お客さまとスタッフのコミュニケーションにもつながります」