トイレットペーパーは価格1.5倍に!アメリカ人の家庭を直撃する「物価高騰」をルポ
物価が高騰している理由は?
一方で、物価高騰にあまり影響を受けていないと言う人もいる。映画の脚本家、マイケル・ボストン(Michael Boston)さんは「独身だから、あまり影響を受けていない。普段から外食を控えて節約しているし、仕事場も自宅近くだからガソリンもそんなに減らない。子どもがいる既婚者の人たちは大変だと思う。はっきり言ってこの物価高騰は彼らにとって恐怖だろうね」と明かす。
物価高騰を肯定的に見る人もいる。3人の子どもを持つシングルマザーでデイケアセンターを経営するシェリル・マテオ(Sheryl Mathe)さんは「物価は高騰しているけど、それと同時に人々の賃金も上がっている。これからもっと稼げるようになると期待している」と明るく話す。
物価が高騰している理由は、日本とほぼ同じで、原材料の価格高騰、原油価格の高騰による物流費や包装資材の価格上昇、それに加えて人手不足と人件費の高騰だ。米国政府はコロナ禍の経済回復の対策として「迅速なワクチン接種」を掲げており、その対策は成功しつつあった。消費は急速に戻り、経済全体の需要が回復した。
しかし、その矢先に、オミクロン株が発生し、2020年頃のコロナ禍が始まった頃に逆戻りしそうになり、米国政府はその対策として「ブースター接種」を開始。ブースター接種も順調に進み、経済が回復しつつある、そんな中、今度は「需要は増えたが、人手不足による供給が追いつかない」という新たな問題が起こってしまった。それが大きな原因となって物価が高騰しているのだ。
なぜ人手不足が起こっているのか?
なぜ人手不足が起こっているのだろうか? コロナ禍で人々は自宅待機やリモートワークの生活に慣れ親しみ、「自分が本当に求めている暮らし方・働き方」にめざめたからだ。人々は平常通りの勤務体制に戻っても元の職場環境に戻りたがらず、離職する。その上、コロナ禍のため学校に通えない子どもやデイケアセンターへ預けることができない赤子や幼児の世話を自宅でしなければならず、やむを得ず離職しなければならない人もいる。
人手不足の原因に「ワクチン接種の義務化」もある。米国政府が経済回復のために迅速に行なってきた「ワクチン接種」のはずだが、ワクチン未接種者が職場を解雇されるケースが増加している。経済回復のための対策が、人手不足へ繋がっているとは皮肉なことだ。
ワクチン接種済みでもコロナ感染で体調を崩し、病気のために欠勤する人たちも増加している。離職者や欠勤者が増え、人手不足の企業が増え、生産と供給が追いついていない。商品やサービスが不足すると、当然、それらの価値が上がり、物価の高騰へと繋がるわけだ。
人手が不足している企業では、給料や待遇を良くして人材を求める。そのため、賃金が上昇し、企業の人件費の負担が大きくなり、商品の値段やサービスの料金がさらに上がる。この流れで、物価高騰がどんどん加速していく。
ジョー・バイデン大統領は「景気回復」を強調し、物価上昇は利点と見ている。2022年2月4日には「アメリカは職場に戻った。就任から1年間で660万人の雇用を増加させた」と発言。しかし、国民の大半は景気回復を実感できず、「バイデン大統領は十分な対応を行なっていない」と政策とインフレに不満を持っているのが現状だ。