ベーシックインカムで救われるか?コロナとAI失業の“W危機”で困窮者が増加
すぐに雇用を奪われることはないが…
でも、事務労働がIT化によって奪われたように、肉体労働も同様ではないか。この懸念に対して井上氏は「おっしゃる通りです」と肉体労働の市場変化を解説する。
「運送業界を例に挙げますと、自動運転トラックが導入されるようになれば運送業界の雇用は減少します。そもそも運送業界は深刻な人手不足であるため、機械化が急がれますが、自動運転トラックが高速道路などで導入され始めるのは早くても2025年くらい。本格的に活用されるのは2030年以降になると思います」
「他の肉体労働も同じように事務労働とは違い、自動化のハードルが高く、すぐに雇用を奪われることはない」と時間に多少の猶予はあるものの、ITやAIによる自動化の波に飲み込まれる日はほぼ確実に訪れるようとしている。
JGPは失業対策になり得るか?
失業対策として政府が仕事を用意して希望者全員を雇用する政策“JGP(Job Guarantee Program )”も注目されている。しかし、井上氏は「頭ごなしに否定するわけではありませんが、いろいろ面で難しい制度だと感じています」と述べている。
「JGPは基本的には時給を同じにしなければいけないのですが、時給で推し測ることができない仕事は少なくない。さらには『事務労働と肉体労働は業務内容が違うのに同じ給料で良いのか?』という疑問が生じます。
また、希望者を全員雇用することもリスキーです。さまざまな仕事を用意しても、楽な仕事やスキルアップにつながる仕事に希望者が偏りかねない。なにより、サボる人や遅刻ばかりする人にどのように対処するのかも見えません」