衆院選で注目「ベーシックインカム」が困窮者を救う。生活保護では不十分なワケ
包括的な資産税で100兆円近い財源が?
固定ベーシックインカムの財源として考えている税金というのは、所得税なのか消費税なのか。
「ベーシックインカムがどのようなものかを論じる上で、私は(分かりやすいという理由で)所得税の増税を例に挙げて説明することが多かったのですが、実際のところ、所得税はかなり酷い税制だと思っています。何しろ経費を膨らませれば、見かけ上いくらでも所得を少なく見せることができるのです。
1番良いのは包括的な資産税を導入することです。さしあたり金融資産税でもいいでしょう。2021年6月末の個人の金融資産は約2000兆円、企業の金融資産は約1200兆円です。これらに3%課税するだけでも100兆円近い財源になります」
生活保護では不十分なワケ
ベーシックインカムが議論される際、生活保護を残すかどうかも議論されるが、井上氏は「生活保護は国民が最低限の生活を送るための最後の守り手」と生活保護の維持を求めつつ、問題点も挙げる。
「生活保護は、救済すべき人とそうでない人を選別する選別主義的な制度であり、困窮者全員が受給できるものではありません。加えて、『生活保護は甘え』といった自己責任論の根強さも相まって、生活保護の捕捉率は2割程度しかなく完璧な社会保障制度とは程遠い。ベーシックインカムは対象者を設けないため、全ての困窮者に手を差し伸べることができ、受給しても後ろめたさを感じることはありません。
先ほど毎月7万円を給付する固定ベーシックインカムの導入を主張しましたが、7万円で生活することは難しい。様々な事情から仕事ができない人は当然いるため生活保護は残すべきです。
生活保護に関わる役所の職員いわゆるケースワーカーの人たちの業務量の多さも見逃せません。生活保護申請者の所得や能力を把握する“資力調査”や、受給者の生活状況の確認など業務量はとても多い。ですが、ベーシックインカムが導入されれば、“ちょっと困窮している人”を軒並み救済できるので、生活保護申請者・受給者が減少し、役所の業務量を減らすことができます」