衆院選で注目「ベーシックインカム」が困窮者を救う。生活保護では不十分なワケ
景気に合わせて給付額を変更するのが良い
とはいえ、「国債は利払いが発生するため、投資家を低リスクで潤わせることになります。政府がわざわざ金融機関や不労所得者にただ飯を食わす必要はない」と国債の問題点も指摘する。
「ベーシックインカムの財源は、最終的には“税金”と“貨幣発行益”であるべきだと思っています。経済学的に厳密な言い方ではないのですが、貨幣発行益を財源にするというのは、政府・中央銀行がお金を刷って使うイメージです。
そもそもベーシックインカムには『固定ベーシックインカム』と『変動ベーシックインカム』の2つが必要だと私は思っています。固定ベーシックインカムとは、政府が税金を財源に給付して、最低限の生活を保障します。変動ベーシックインカムは、景気変動に合わせて中央銀行がお金を発行して、(実際は刷る必要はありませんが)国民に給付します。
ベーシックインカムのために絶対国債を発行してはいけないというわけではないですが、基本的には国債を発行する必要はありません」
固定ベーシックインカムの財源は税金に
国債を発行しないのであれば、均衡財政主義のように思えるが。
「私が一般的な均衡財政主義を批判するのは、お金の量をほどよく増やすことができないからです。政府が支出を増やすと世の中に出回るお金“マネーストック”が増えて、税金をとるとマネーストックが減ります。政府支出と税金の差が財政赤字なので、財政赤字の分だけマネーストックが純増することになります。
あえて俗的な表現をすれば、”政府が借金をすることでお金が増えていく”のです。したがって、均衡財政主義の下ではお金を増やせず、2%というインフレ率目標を確実に到達する政策を打ち出すことができないのです。
ところが、変動ベーシックインカムとして国民にお金をバラまいて、ほどよくお金の量を増やすことができるのならばインフレ率目標を達成できるので、固定ベーシックインカムの方は財源が税金で構わないのです。逆に固定ベーシックインカムの方も国債を財源にしてしまったら、過度なインフレを引き起こす可能性もあります」
政府と中央銀行の両方でお金を増やしたらダメなのか。
「現行の制度では、景気について責任を負う経済主体が、政府なのか中央銀行なのかいまいち分かりません。私の提案では、中央銀行が変動ベーシックインカムを実施することによって、景気をコントロールする責任を負います。
固定ベーシックインカムの方は、税金を財源にしているので政府による単なる再分配政策であって、お金を増やしたり減らしたりするわけではない。政府は、基本的には景気のコントロールには関与しないのです。こうすれば、責任の所在が明らかになります。」