なぜ給与は安いまま?働く人を貧しくする日本に専門家が警鐘
公務員の非正規化はデメリットしかない
また、人件費削減でいうと公務員の非正規化が進んでいるが、室伏氏は「公務員を非正規化する必要なんてありません。デメリットしかない」と危機感を募らせる。
「行政は民間企業のように利益を出すことが目的ではありません。公共の目的のために安定的に必要な人員を確保して運営しなければいけない。もちろん暇な時期もあるかもしれませんが、いざという時に必要だから確保されているのであり、安易な人件費削減などはもってのほか。
公務員の非正規化が進められた背景には、小泉政権時に竹中平蔵氏が中心となって始まった“三位一体の改革”にあります。地方交付税交付金や国庫補助金などを減らし、地方自治体が人件費削減に踏み切らざるを得ないように仕向け、結果、非正規化・民営化が進められました。その後、窓口業務を中心に派遣社員に置き換える地方自治体が増え、竹中氏が取締役会長を勤める人材派遣会社・パソナグループは多額の利益を得ました。
利益追求のために竹中氏を始めとした人が『日本は公務員が多すぎる!』『公務員はまともに働いていない!』と嘘を並べて行政を空洞化させましたが、必要な部門に必要な人材がいないことは、私たちが安心して生活を送れなくなるリスクがあります。公務員の非正規化を止めさせ、むしろ公務員を増やしていかなければなりません」
「公務員=減らしても良い」とイメージしている人も珍しくない。しかし、イメージと現状が離れていることは往々にしてあり、とりわけ公務員の現状については、冷静に見極める必要がありそうだ。
私たちは株主のために働いている?
改めて政府や企業が露骨なまでの人件費削減を進めている理由を聞くと、室伏氏は「主に“株主資本主義”と“過剰なグローバル化”の影響」と話す。
「まず株主資本主義ですが、金融ビックバンと会社法制定、その後の数次にわたる改正で、株主の力は強くなりました。前回の改正により設置が義務化された社外取締役は株主の代理人です。株主の関心事は配当であり、外国人投資家を中心にその増額を要求してきます。
それに対応するためには、コストの大きな部分を占める人件費、そして設備投資を削らざるをえなくなっています。しかも現在、上場企業は四半期決算が義務付けられているので、3か月ごとに財務状況をチェックされ、利益を出していない部門や事業の廃止や売却を株主から要求されることもあります。短期間で成果を出すことなどほぼ不可能であるにもかかわらず、です」