なぜ給与は安いまま?働く人を貧しくする日本に専門家が警鐘
テレワークも人材費削減が狙い?
総務省「労働力調査」などによれば非正規労働者の中でも派遣社員は1割に満たない。そのため「派遣労働に関する問題に過剰に反応しなくてもよい」と主張する識者は少なくないが、室伏氏は「問題視すべきは派遣社員の割合ではなく、人件費削減のために労働市場が大きく歪められていること。派遣労働の問題はそのひとつに過ぎません」と、日本の労働環境全体の変化に注視することを促す。
「第二次安倍政権から続く『従来の働き方を見直して“ジョブ型”にしましょう!』『フリーランスとして柔軟に働きましょう!』といった動きは、菅義偉政権でも継承されました。この流れの背景には、派遣労働と同じように人件費削減が隠れています。ジョブ型に関しては、成果が評価指標になるため『期待した通りのものではない』と適当に難癖をつければ、給与を減らすことも可能です。
コロナ禍以降、もてはやされたテレワークも同じ理屈。テレワークも仕事をしている姿が見えないおかげで、働き方にケチをつけて人件費削減ができます。そのうえ、労働時間も曖昧になるため、残業代削減も狙え、企業にとってはとても都合が良い。
また、“柔軟な働き方”で言うと、“副業推進”が挙げられますが、これも結局は『給与を上げたくないから他所で稼いで』という言い訳を企業に与えるもの。給与の低さを主張する労働者の口をふさぎ、自己責任論を押し付けるための口実に過ぎません」
誰もが独立で活躍できるわけではない
「次に“フリーランス”ですが、フリーランスは収入が不安定になりやすく、誰でもできる働き方ではありません。当然、仕事を与える企業側が優位に立てるため、弁護士や税理士、著名なクリエイターといった一部の人くらいしか活躍できません。『ウェブデザインできます!』と普通の人が言っても、企業に都合よく使い倒されるだけ。
フリーランスの場合、社会保障負担もなくせるため、派遣労働以上に企業側のメリットがあり、企業が推進したい理由がよくわかります」
テレワークや副業は“新しい時代の働き方”というキラキラしたイメージがあるが、人件費削減の狙いがあったことには驚きである。