菅義偉首相に読ませたい中国古典。名経営者がこぞって勧める最高のリーダー論
菅首相も『貞観政要』を読むべきだった?
最近の日本の政治の世界とはえらい違いではないでしょうか。記者が菅義偉首相にしっかり答えを聞きたいと何度か質問しただけで、怒られる事態が発生しています。「ルールを守ってください!」と記者にキレるのではなく、もっと余裕をもって温和に冷静に対処していたら、イメージもまた変わったであろうに残念なことです。これでは、器の小ささを自らアピールしているようなもの。(2021年9月3日に)任期満了に伴い、9月末で辞任する意向を示しましたが、もう少し何とかならなかったのでしょうか。
また、菅首相は、かつて総務相時代に、自らの方針に反した担当課長を左遷したと衆院予算委員会で述べています。しかし、これでは、官僚の間に「抵抗したら干される恐怖」を生むだけでしょう。最後には、本気になってこの人(大臣)のために尽くそうという官僚はいなくなるはずです。寄ってくるのは太鼓持ち、ヒラメ官僚だけという最悪の事態に陥るのも時間の問題。いや、菅政権の低支持率を見たら、もうすでに陥っているのかもしれません。
さて、太宗は、時には、魏徴を寝室に招いて、意見を聞くほどだったと言われています。太宗は、魏徴を重用する理由を「私が嫌な顔をしても、いつも切実に諫めて、私の非道を許さない。私が彼を重用するのは、そのためだ」と語っています。しかも、魏徴は、太宗と敵対していた兄の側近だった人です。その魏徴を重用したということも、太宗の器の大きさを示すものでしょう。
政治の世界においては、周りを「お友達」で固めたり、裏切らない官僚出身の政治家を重職に採用したり、前述したように、反対意見の官僚を異動・左遷する例が見られますが、そうしたところから悪い意味での「忖度」が生まれますし、本気になって意見をする人は減っていく可能性が高い。しかし、それでは、良い政治や経営をすることはできないでしょう。
リーダーシップは「俺についてこい」的な感じで、グイグイ引っ張っていくことだけではありません。耳の痛いことでも、ひたすら聞いて議論する、そして最善の結論を出していくことが大切なのです。どのような人の意見でもよく傾聴せよ。これが世界最高のリーダー論と呼ばれる『貞観政要』のエッセンスです。簡単なようでいて、意外に難しいかもしれませんが、皆さんも他人の苦言をしっかりと受け止めて、良い人生を歩んでいってください。
<TEXT/濱田浩一郎>