病に倒れた“創作カレー”のパイオニアが語る「コロナの時期にできること」
コロナの時期だからこそできること
――お店を沼袋にオープンして15年ほど経った2012年、塚本さんは脳梗塞で倒れてしまいました。
塚本:料理人というか人としても、人生のターニングポイントでしたね。見た目ではわかんないですけど、後遺症もけっこう色々と残ってしまって。
幸い、味覚には影響がなかったんでそれは良かったなと。そのおかげで自分自身も食に対して見直しができたり、新たなカレーができたり。だから良いほうに考えれば良かったのかもしれないですね。
――体調の影響もあり、沼袋のお店は閉店になりましたが、2016年に「初台スパイス食堂 和魂印才たんどーる」として、初台にオープンとなりました。5周年ということですが振り返ってみていかがでしょうか。
塚本:あっという間ですね。もう5年も経ったんだなって。2020~2021年にかけてはイレギュラーな期間ではありましたが、コロナの時にできたものもありますしね。
テイクアウトの海苔弁がそうです。ナンコツキーマを使って、鶏そぼろ弁当と海苔弁当を足して2で割ったようなものができないかなと前から思っていたんですが、やるなら今かなと。試しにやってみたら割と評判が良くて。
誰にも教えてこなかったレシピを1冊に
――そんな5周年というタイミングで初レシピ本『にっぽんのインドカレー』(東京ニュース通信社)が5月に発売になったんですよね!
塚本:レシピ本は1冊くらいちゃんとしたものを作りたいなっていうのがあって。記録として残しておきたかったので、とりあえず全部出してしまいました。
――本当に全部出しちゃってますよね。ビックリしました! お店の人気カレーはほぼ網羅していますし、プレートにちょこんと乗っている副菜まで。記録としてだけでなく、誰かに伝えたいという想いもあったんですか。
塚本:今まで一度も弟子を取ってこなかったんですよ。料理を誰にも教えていないし、料理教室に来た人くらいにしか教えていないので、そろそろ人に伝えてもいいかなって。
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スパイスカレーの台頭により、自由な発想でカレーを作る人が増えてますが、塚本さんのような切り開いた人がいたからこそ自由な今があるわけで、実は気づかないところで多くの作り手さんも影響を受けているんですよね! これからも“和魂印才”のスピリットで我々カレーファンを驚かせ続けてほしいものです。
<TEXT/カレー研究家 スパイシー丸山>