20代が貯金を増やすのに「資産運用はオススメしません」
柴山氏自身も、“自己投資”でプログラムを学んだ
――ウェルスナビを設立するまで、柴山さんは世界最高峰のコンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーで、ノーベル賞理論に基づくアルゴリズム(数式)などを駆使して機関投資家の運用をサポートしていたわけですよね。
柴山:ええ。アルゴリズム自体は公開されていて自由に使えるものだったので、それとフィンテック(金融テクノロジー)を組み合わせれば、広く一般の人々にも世界水準の資産運用を実践してもらえると思って起業を検討していました。
――そこから設立までどのような経緯があったのでしょう?
柴山:サービスを立ち上げるうえではITに詳しい人材が不可欠でした。そこで、数々のエンジニアたちに説いて回ったのですが、共感は得られるものの、パートナーとしてともに開発していくことを決意する人はなかなか見つかりませんでした。
行き詰まった私は、渋谷にあるプログラミングの短期集中講座を受講することを決めました。それは当時、マッキンゼーの日本支社長だったジョルジュ・デヴォー氏に「金融の世界でイノベーションを起こすならプログラミングは必須」と進言されたのがきっかけです。
――プログラムを組んだ経験はあったのですか?
柴山:まったくの初心者でした(笑)。もちろん、短期集中講座のわずか1か月でどうにかなると思っていたわけではありません。とにかく、まずは自分の手でサービスのプロトタイプを作ってみようと思ったのです。すると、スクールの同級生や講師がどんどん手伝ってくれるようになり、彼らの助けも借りて完成にこぎ着けられました。
――自分でプログラムを作ったことが周囲を巻き込んで、結果的に功を奏したのですね。
柴山:その結果、ベンチャーキャピタルの出資が決定。そのことについて報じた日本経済新聞の記事を見て、金融業界IT業界のプロフェッショナルが続々と私のもとに集まってきたのです。
――今なお、自らプログラムを組んで開発に携わっているのですか?
柴山:いいえ。現在、ウェルスナビが提供しているサービスはプロのエンジニアが手掛けたもので、プロトタイプをはるかに超えて進化しています。とはいえ、自ら手を動かしたことには大きな意義がありました。
エンジニアの苦労や喜びを、少なくとも部分的には理解でき、彼らを心底からリスペクトできるようになりました。そして、チームが形成され、私がその一員として認められたことも、モノづくりを軸とするウェルスナビの組織作りにつながりました(インタビュー後編は近日公開)。
<取材・文/大西洋平 撮影/山田耕司(本誌)>