Googleが欧州委の制裁金5700億円を払いたくない本当の理由
GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏は同日に声明を公開。
2007年にAndroidを無料で提供することを決め、過去10年間に数十億ドルの投資をしてきた。欧州委員会の言うように、競争を阻害して選択肢を狭めているのではなく、AppleのiOS端末に対する選択肢を提供していると述べています。
世界中の1300以上のブランドから2万4000以上の端末が発売され、Playストアでは100万種類以上のアプリが公開されています。この制裁は、Androidのビジネスモデルを否定するもので、異議を申し立てるとのこと。
過去にもGoogleに制裁金を課したEU
実はEUがGoogleに巨額の制裁金を科すのは2度目。
2017年6月、欧州委員会はインターネット検索で、ショッピング検索をしたときにGoogleショッピングを優先的に表示した、というのが理由です。
当然、検索結果の上位に表示されれば流入が増え、利益が増えたことは確かでしょう。
しかし、ライバル企業からの訴えにより2010年から調査をしていた当局は、24億2000万ユーロの制裁金を科しました。日本円で約3000億円。もちろん、こちらも異議を申し立てています。
どうしてこれほどEUはGoogleを攻撃するのでしょうか。実際、合計8700億円という大きなお金をほしいところではあるでしょうが、それは目的ではありません。
Googleが守ろうとしてるビジネスモデル
一方、Googleの親会社であるAlphabetも、時価総額は8300億ドル、流動資産は1000億ドル以上あります。Googleとしても、この件が金で片付くなら余裕で払ってしまいたい金額なのです。
実は、EUは2015年に「EUデジタル単一市場(DSM)戦略」を打ち出しています。2016年までにEU加盟国間で分断されているデジタル市場を統合し、欧州でのビジネスを活性させるというものです。
今年5月から施行が開始された個人情報保護の新ルール「一般データ保護規則(GDPR)」もその一環。しかし、まだ完全な統合は達成しておらず、EUの経済が堅調のうちに何とかしたいと考えていることです。
それには、自分たちがコントロール下に置けないGoogleの影響力はできる限り抑制したいというわけです。Googleもお金があるからといって、はいそうですかとは頷けない。
ビジネスモデルの根幹を否定され、自社のプラットフォームなのに自社コンテンツをちょっとでも優遇すると制裁が発動するのであれば収益を増大させ続けるのが難しくなります。
そのため、異議申し立てをするしかないのです。どちらにせよ、異議申し立てをすれば、最終結果が出るのは何年も先のことになります。
EUが引く訳はないので、どこかで軟着陸させることになると思いますが、Googleはその間にどのような手を打ってくるのでしょうか。今後も、EUとGoogleのバトルからは目を離せません。
<TEXT/柳谷智宣>