「震災を機に気仙沼に移住」数億円の世界から離れて女性デザイナーが見つけた幸せ
売れるだけではないデザインの価値とは
これまでは売れる商品を作るデザイナー専門だったのが、作り手とお客様をつなぐための総合的なプランニングのできるデザイナーへと、自分の幅が広がったというのだ。
「今ではだんだんデザインの価値をわかってくれて、きちんと仕事の相談をしてくれる方が増えてくるようになりました。ただ、Uターンして、3年は本当にトライアンドエラーの繰り返しでした。
そして、一緒に会社を経営していたパートナーとも別々の道を歩むことになり、もうこの先どうしたら良いか大きな壁にぶち当たったりしましたが、それまでのいちデザイナーという立ち位置から全体を見るディレクションという動きを自分なりに学び、仕事として少しずつですが加速していきました。とはいえ、今でも地元だけでなく仕事の半分は県外で外貨を稼いで地域に還元できるようにしています」
冒頭に話した通り、商品パッケージから地元のお祭りまで今では鈴木さんのデザインが気仙沼に欠かせないものになってきている。
都会とローカルの違いはぶっちゃけ…
そんな鈴木さんにクリエイターとしての仕事や生活も含めて都会とローカルの違いについて、どう思っているかを聞いてみた。
「お金に苦しいという状況はないですよ。生活の質は確実に変わってきますね。特に食事。顔が見えるの地のものを食べられるという幸せを感じます。都内に住んでいたころはなかった感覚ですよね。地元の方たちから野菜もらったり、魚もらったりして、顔が見える地元のものを食べられる。趣味もお金を払って消費するというものではなく、自然で過ごすことが多いです。今はサーフィンが趣味ですし(笑)」
趣味と食生活は充実しているそうだが、それでも都会の暮らしが懐かしくなることはないのだろうか。
「唯一、これまで不便だったのは都会に行かないと情報収集できないセミナーやイベントなどの機会くらいでした。でも、それも現在はオンラインで入手できるので、あまり気にならなくなりました」
鈴木さんはさらに現在、地元の高校でデザインを教える講師業もしている。クリエイティブから活動をマルチに広げている。