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元官僚が語るブラック省庁「月3日しか電車で帰れない」サービス残業の闇

ビジネス

なぜ若手官僚がブラック労働に

官僚

東京霞が関 国土交通省(イメージです)

――YouTubeなどで若手官僚の過酷な労働環境についても発信されていますが、その背景にはどういった問題があるとお考えでしょうか?

おもち:いろいろな要因がありますが、自分たちがどれくらい働いているか、正式に把握・公表されていない、現状把握が正確になされていないことが一番大きな問題だと思います。2018年に中央省庁の残業時間は月30時間ぐらいだと公表されていますが、これはあくまでも残業代が支給された時間にすぎません。実際には公表されていない労働時間がある。

 一方で、公表されている時間は「残業時間月30時間」ですから、外部の人間が見れば「いまのままでも人員が足りている、少し効率化すれば問題がないだろう」と思われてしまう。だからそこで議論が終わってしまうのです。

 例えば、河野太郎大臣が「霞が関はブラックだ」とおっしゃっていますが「それは河野大臣の所感ではないか?」と反論された場合、それを否定するための公式なデータがない状況です。

議論が的外れになってしまうワケ

――問題を解決しようにも必要な情報がない、というわけですね。

おもち:具体的な数字がわからないと改善のための議論が的外れになってしまいます。仮に「平均残業時間が一人頭平均で80時間くらいある」というデータがあるとしましょう。

 なぜ残業時間が月80時間になってしまうのか、その要因を特定する。その要因をひとつひとつ改善していく必要があります。本来、必要な残業であれば残業代を支払うべきと思いますが、仮に財源との兼ね合いで残業代が払えないのであれば、業務量を減らす、効率化する、極端な例を挙げれば、業務を効率化・均等化した上で固定残業代制にして、一人当たりの生産性を上げることを試行するなどの対策が考えられます。

 もちろん、これらの対策が正しいかどうかは長時間労働の要因を特定した上で更なる議論が必要ですが、具体的なデータがあれば、どのような対策を取るか、複数の選択肢を踏まえて議論ができる可能性が見えてくると思うのです。長時間労働の主因が国会対応なのであれば、国会関係業務を国会議員側と協力して改善していく、という方向になっていくでしょう。

 ですが、今は正確な労働時間を出しておらず、改善の必要性が国全体で共有できていない。霞が関では改善の必要性が共有されていても、霞が関を超えた議論が進まないのではないかと個人的には思っています。結果として、人員が足りず、無茶な労働をしなくてはいけない。いわゆるブラック省庁みたいなものが出てくることにもつながっていると思います。

⇒インタビュー後編<元官僚YouTuberが告白「霞が関からブラック労働はなくならない」>に続く。

<取材・文/柳洋>

【おもち@元官僚系Youtuber】
官僚の闇から日常までを疑似体験できる場と、官僚×民間経験を基に発信。新卒で中央省庁→退官→民間企業へ。得意分野は観光と労働系
■Twitter:@ex_kanryo_mochi
■YouTube元官僚 おもちチャンネル

編集者・ライター。1993年生まれ。フリーランスを経て、出版社に勤務。Web記事や書評を中心に編集・執筆をしています

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