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10回忌のS・ジョブズが実践した“考えない瞑想”。1回15分でもOK

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エンジョイ禅!

ジョブズ

ヨーロッパの山小屋で坐禅中の弘文。全宇宙と調和する坐禅を欧米に伝えた。「月、星、太陽、風、雨は、すべては、あなたの肉体の一部なのです」(弘文) photo ©Vanja Palmers

 坐禅でもっとも困難なのは、とりもなおさずじっとしていることだ。また、身体以上に苦しいのが心で、放っておけばつい活発に思考してしまう。でも、心配は無用。坐禅中に、心の動きをムリに止める必要はない。というより、人間、そうはできないものだ。大切なのは、考えを深堀りしたりいじったりしないこと。浮かぶは浮かぶままに、消えるは消えるにままにさせておこう。

 数週間、数か月と長期間坐禅を続けていくと、いずれ考えること自体に飽きてくる。「もう、今この瞬間にまかせ、ゆだねるしかない!」と思うようになる。そして、それでよい。なぜなら、只管打坐(しかんたざ)とは、私たちの習い性である自意識がコントロールしまくる「発信モード」から、天地自然をあるがままに受け入れる「受信モード」へと移行する行いだからだ。坐禅とは一見、孤独な行為に見えて、その実、宇宙と調和する開かれた道なのである。

 開かれた心身を持てば、この広い世界で自らがなすべきものが見えてくる。ジョブズは、これを「坐禅で直感が花開く」と独特の言葉で表現した。只管打坐は、目的、目標を持たないから、こうした現象を目指すものではないが、天地いっぱいの坐禅を続けていけば、おのずとジョブズの境地に近づいていく――。

 だから、肩肘張らずにまずは坐ってみよう。最後にひとこと、弘文の口ぐせを。エンジョイ禅!

<TEXT/柳田由紀子 イラスト提供/曹洞宗宗務庁>

1963年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、新潮社入社。1998年スタンフォード大学他でジャーナリズムを学び、2001年アメリカに移住。著書に『『宿無し弘文ースティーブ・ジョブズの禅僧』『太平洋を渡った日本建築』、訳書にコミック『ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ』他

宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧

宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧

足かけ8年、関係者への徹底的な取材の中で浮かびあがってくる、日本人僧侶・乙川弘文とジョブズとの魂の交流。僧侶としての苦悩

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