自然とケガを防ぐ走り方に。アシックスが開発「スマートシューズ」とは
スマートシューズで「怪我を防ぐ走り方」も
原野氏が属するアシックススポーツ工学研究所では、アマチュアからプロまで世界中のランナーの動きを分析してきた。
長年蓄積したデータを活用し、ユーザーへ還元できないか。そういった思いから「ランナーのデータ」とスタートアップ企業の「センシング技術」を掛け合わせ、独自の分析アルゴリズムを開発し、スマートシューズへと昇華させたわけだ。
「走れば走るほど、パーソナルデータがアプリ上に蓄積されるため、怪我を未然に防ぐことが期待できる負担の少ない走行や効果的な走行のアドバイスなど、一人ひとりに合わせた『よりよい走り方』を追求できる。ランニングにおけるニーズは変化するので、今後も睡眠を含めた疲労回復や心拍といった生体データを用いて健康増強のアドバイスなどもできたらと考えています」
デジタル・パーソナライズ・サスティナブル
移動の制限や大規模なマラソン大会の中止など、社会情勢が大きく変化する中、ワーケーションやスポーツ・ツーリズムといった新しい余暇の過ごし方も注目されつつある。デジタル技術を通した今後の事業展望やランニング文化の醸成を、どう描いているのだろうか。
「これからは『デジタル』『パーソナライズ』『サスティナブル』をキーワードに研究開発に取り組む必要があると考えています。売上高の約半分を占める主力のランニング事業のさらなる強化に向け、デジタル技術を通し、一人ひとりに最適化された商品やトレーニングやバーチャルレースなど、新たな体験の提供に注力していきます。将来的には、ランニング事業で得られた知見やテクノロジーを、健康長寿の実現やスポーツ・ツーリズムなどヘルスケア領域にも展開していきたいです」
先に記載したEVORIDE ORPHEのユーザー体験も、古くからアシックスとして取り組んできたものだと原野氏は説明する。
「今までもトップアスリートにヒアリングし、その要望に沿ったものづくりを進めてきました。これが、デジタル技術を活用すれば、一般ランナーへも広く汎用的にパーソナライズされた価値を提供することができます。スマートシューズがその第一弾です。得られた知見を生かして、横展開していきたいと考えています」