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コロナの打撃からV字回復「焼き肉きんぐ」強さの秘訣は

ビジネス

業績推移を深堀り…コロナ下の経営は?

きんぐ

図:焼肉部門売上:Q(四半期)ごとの推移(決算短信より筆者作成)

 つづいて、「焼肉きんぐ」における、新型コロナウイルスによる影響の程度を深堀していきます。Q(クオーター=四半期=3ヶ月のこと)ごとの焼肉部門の売上推移について、前期との比較グラフを作成しました。

 2020年3月末までは前期比プラスで推移していますが、2020年4月-6月は前期比59.7%。ただし、この時期(4月-6月)のマイナス分は、期の前半で蓄えた分で補てんできる範囲で済んでいます。4月-6月の前年度比を月別に見ると、下記の通りです。

2020年4月:14.9%、2020年5月:50.3%、2020年6月:103.3%

 では、同業他社の焼肉店と比べるとどうだったのでしょうか。「一般社団法人日本フードサービス協会」が公開している各業態の前年比データによると、下記の通りでした。

【焼肉店】
2020年4月:30.9%、2020年5月:50.9%、2020年6月:88.7%

 4月は店舗休業も相まって、焼肉きんぐは同業他社と比べてダメージが大きかったものの、5月以降は同業他社並みになり、6月は同業他社よりも回復が早く、例年並みに戻すことができています。

焼き肉きんぐがV字回復を遂げた理由

きんぐ

7月15日よりエリアごとに新4大名物の提供をスタート ※プレスリリースより

 焼肉きんぐがこの時期に打った対策としては「一部店舗にてテイクアウト販売実施」「平日のランチ営業実施」と、飲食の同業他社と大きな差はありませんでした。また、郊外型店舗であることから「移動手段が車で家族単位なので、都市部より客足の戻りが早かった」という分析もありますが、正直、これだけが理由とは言い難いように思います。

 焼肉きんぐの回復劇は「焼肉」という業態の性質と、その提供クオリティで同業他社と差がついていたのが一番の要因でしょう。

 焼肉を自宅で行おうとすると、煙の対策や、肉を焼いた後の匂い消しなど、意外とやらなければいけない作業が多く、正直面倒です。ただ、焼肉店であれば、無煙ロースターなどの設備もあり、食べた後の片づけもしてもらえるので、お肉を食べることに集中できます。

 また、「焼肉きんぐ」の食べ放題プランは、オススメプランが約3000円/人、一番豪華なプランでも約4000円/人。たまに家族で食べるごちそうとしてちょうどよい価格帯です。そして、食べ放題プランでは、野菜やご飯もの・揚げ物、デザートまで楽しむことができます。

 基本的にコロナウイルスの感染対策を意識しながらの消費は「どうしてもその企業でないといけないもの」「生活必需品」に集中する傾向があります。焼肉は生活必需品というわけではないので、今回の場合は「この企業でないといけないもの」に相当したのではないでしょうか。

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