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在宅ワークで急増中のクラウドソーシング。利用者の特徴は?

コラム

コロナで変革を迫られる労働力構造

 そもそも日本の労働力構造はどうなっているのでしょうか。厚生労働省の統計によると、就業者数が最も多いのは「製造業」と「卸売業、小売業」で、それぞれ1100万人程度が従事しています。

 いま最も多忙なはずの「医療、福祉」は意外なことに3番目に就業者の多い業種ですが、800万人強で推移していてコロナ危機の大きな影響も感じられません。ニーズはあっても、簡単には増員できない仕事ということなのでしょうか。同じくいま最も多忙な業種である「公務」はむしろ就業者が減っています。

 雇用への打撃が大きかったのは「建設業」「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」。減少がとくに顕著なのはやはり休業要請に見舞われた「宿泊業、飲食サービス業」で、昨年10月に比べて80万人も減りました。「卸売業、小売業」は休業対象外だったスーパーマーケットやコンビニが下支えしたものの、2月をピークにじわじわと就業者が減少しています。

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図表:産業別就業者数(総務省労働力調査より)

 クラウドソーシングの主要業務であるデータ入力などは「サービス業(他に分類されないもの)」、プログラミングやライティング、デザイン、映像作成などはこの間も若干就業者が増えている「情報通信業」に該当。一概にいえませんが、販売チャネルのデジタル化などでむしろ需要が伸びた仕事の一部は、クラウドソーシングが吸収したといえるのではないでしょうか。

 クラウドソーシングではありませんが、自治体などによる人材マッチングが奏功していそうなのは「農業、林業」。2月以降じわじわと就業者が増え、外国人労働者に期待できなくなっても作業はなくならない農林業の労働需要を支えています。また、「教育、学習支援業」は在宅学習や1クラスあたりの参加人数が制限されたことなどの影響で人手が足りなくなっているのでしょう。「運輸業、郵便業」が若干増えているのは、宅配などの物流における雇用が航空業界で激減した労働力需要を上回ったのかもしれません

 雇用調整助成金をはじめとする雇用維持政策も奏功してか、まだじわっとした動きではありますが、オリパラやインバウンドを前提としていた産業構造そのものへの劇的な「回復」は見込まれず、労働力構造変化はむしろ今後加速するものと考えられます。

「在宅」検索、探しているのは仕事が中心

 テレワーク自体はオリパラ対策や働き方改革の流れから一部企業で導入が進み、「在宅」というキーワードはこの2年間検索数が増えていましたが、今年に入ってからは文脈の変化が。「在宅勤務」や「在宅ワーク」が最も関心が高く、それぞれ40代男性、40前後の女性が多く検索している一方、本当に探しているのは仕事と見受けられるのです

 40代後半男性の「テレワーク」、30代前半女性の「パソコン」といった本業の在宅勤務に関すると思われるキーワードにも含まれていますが、より目立つのは40歳前後男性の「バイト」や「副業」。

 女性では30歳前後の「在宅バイト」、35歳から40歳の「データ入力」「求人アルバイト」、40代後半の「内職在宅ワーク」など、明らかに本業ではない仕事を模索する様子が見て取れます。女性はとくに「英語」「翻訳」「データ入力」など具体的なスキルを示すキーワードを使っていて、仕事探しの本気度が高そうです。

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図表:在宅」で検索したユーザーの使った主要検索キーワード(2020年1-6月、PC)

「クラウドソーシング」や「バイト」というキーワード自体はそう多く検索されていないのですが、実は「在宅」で検索したユーザーのほとんどは求人サイトやクラウドソーシングを閲覧。探しているのは「在宅」でできる仕事だというニーズがわかります

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図表:「在宅」検索ユーザー後に閲覧された上位サイト(2020年1-6月、PC)

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