六本木、銀座…ドン・キホーテは、なぜ一等地に出店するのか?
品揃えと価格帯が異なるプラチナドンキ
ここで、通常の経営コンサルタントの視点であれば、ドン・キホーテが「立地に合わせて価格帯や製品ラインナップを変えている」ことと「安売りでも規模が大きくなれば規模の経済が働くこと」の2つに着目するのではないだろうか。
たとえば、白金台にあるプラチナドンキには和牛やシャンパンなど高級食材が揃えてある上、他のドン・キホーテと同じような製品であっても1割ほど値段が高いものもある。このように、立地に合わせて品ぞろえと価格帯を変更することで利益を確保しているのだ、という説明がまずはできるだろう。
もうひとつは規模の経済である。ドン・キホーテはたしかに安売りだけれど、安売りの数をこなすことで大量仕入れによる仕入れ値の低下、店舗の家賃や店員人件費などの固定費・共通コストの削減がみこめるという説明である。
なぜドンキだけが特殊なのか
ここまではよくある経営コンサルタント的な説明だ。たしかに一理はあるのだが、しかし次のような疑問がわいてこないだろうか。それは「製品ラインナップ・価格変更と規模の経済だったらどこのスーパーでもできそうだけどなぜドンキだけが特殊なの?」という疑問、あるいは「本当にそれだけで銀座や白金の家賃をまかなえるの?」というものだ。
手始めにドン・キホーテを運営する株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの有価証券報告書のデータを分析してみる。資料によると、ディスカウントストア事業(ドン・キホーテ)の1㎡当たりの年間売上は80万円ほど、総合スーパー事業(ユニー等)は50万円ほどだ。
一方で銀座の1年間の賃料は出所によりばらつきがあるが、日本不動産研究所のデータをもとに概算すると1㎡当たり平均10万~20万円ほどとなっている。これなら大丈夫じゃないか、と思われるかもしれないが、実はそう簡単ではない。