泉里香、斎藤工…なぜCM連発できる?求人掲載無料「インディード」の戦略
利用者が多いサービスは魅力が向上
だが、経営学者の視点はここから一歩進む。すなわち、「Indeedはなぜ掲載を無料にしたのか?」を問うのである。その答えは「ネットワーク外部性効果」にある。求人サイトは典型的な「人が集まれば集まるほどお客にも掲載企業にも魅力がある」という特徴がある。
人がたくさん集まっているからこそ企業も求人広告を出したいと思うし、企業の求人が集まっているからこそ人が集まってくる。このように、利用者が多いことがサービスの魅力そのものを向上させてしまうのである。これがネットワーク外部性だ。
インターネット業界ではネットワーク外部性が効きやすい業種が多い。SNSやポータルサイト、キュレーションサイトなど、上記の論理が当てはまる業種はインターネット業界では数多い。
今までの日本企業と逆のやり方
このように、ネットワーク外部性が働く業態だからこそ、Indeedはとにかく人を集めることを先決にしているのである。先に、日本企業は広告費を利益調整手段として用いてきたと述べた。しかし、Indeedはむしろその逆なのである。
すなわち、儲かっているときには広告を多く出稿し、逆のときには広告を控えるという行動ではなく、「儲かるためには損してもいいから目立つ」という行動を取っていると考えられる。
ネットワーク外部性が強く効く業態においては、「広告がたくさん出ているということは儲かっているんだな」という発想自体を180度転換する必要がある。Indeedが元々外資系であったことやリクルートの子会社であることは、ネットワーク外部性を意識した戦略立案・実行ができることや、必要な資金調達がおこなえたことの説明にはなる。だがそれは直接の説明ではなく、Indeedが立てた戦略を実現する条件に過ぎない。
真因はネットワーク外部性にもとづいた戦略観にある。当初は広告で大損してもネットワーク外部性を得ることが大事、その後にクリック課金にすることで掲載企業が納得してお金を払ってくれる、いわば損して得取るの戦略が効く分野だったから、つまりプラットフォーム戦略が有効な業界だったからというのがIndeedのビジネスモデルに関する経営学的な回答なのである。
<TEXT/岩尾俊兵>