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アマゾン、楽天、ヤフー「国内EC市場」に消費税10%が与えた影響とは?

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ECと「◯◯ペイ」の親和性は?

 楽天グループやソフトバンクグループとしてのZHD(もちろんドコモやKDDIも)が目指すのは、コア事業の顧客基盤により多くの自社サービスを使ってもらうこと、すなわち一人ひとりのユーザーから得る利益(ライフタイムバリュー)の最大化です。ECを基盤にリアル決済そして今後通信へ向かう楽天、通信を基盤に決済への展開で収めた成功をECで再現したいZHDと順番が異なる両社の戦略に、ユーザーは思惑通り反応してくれているのでしょうか。

 楽天市場および楽天ペイ、主要サービスの併用状況を見ると、楽天市場のサイト・アプリ間の併用は多いものの、これらECユーザーが楽天ペイを多数使っているかというと、最多のラクマユーザーでも47%にとどまります。EC起点の囲い込みは、現在のところリアル店舗決済まで充分に届いているとはいえないようです。

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図表 9 楽天グループ主要サービスの併用状況(スマートフォン、2019年10-12月)

 ただ、楽天ペイのユーザーは、アプリだと81%、サイトでも76%楽天市場を利用する高ロイヤリティユーザー。4月開始の通信事業にとって最重要ターゲットといえるのではないでしょうか。

 コア事業のECで負けられない楽天市場は、目下送料無料のデリバリー体制構築に躍起です。送料込み表示の3月18日決行、加えて自社物流網構築のため10年間2000億円の設備投資も発表しました。実質送料がほとんどかからないAmazonへの強烈な対抗心が見てとれますが、まずは出店者の離反を抑えてECとしての魅力を確保しなければならない厳しい局面ともいえます。

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図表 10 楽天戦略共有会Commerce Companyスライド資料より

 他方、Yahoo!(PayPay)ECのユーザーは最も少ないYahoo!ショッピングサイトユーザーでも57%、PayPayモールアプリユーザーだと98%もPayPayを併用しています。ユーザー数自体はあまり伸ばせていないPayPayモールですが、このロイヤリティの高さは強みといえそうです。

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図表 11 ZHDグループ主要サービスの併用状況(スマートフォン、2019年10-12月)

PayPayモールキャンペーンは期待を下回る

 ただしPayPayユーザーのEC利用はYahoo!ショッピングのサイトとアプリがそれぞれ39%にとどまり、「併用なし」が同じく39%です。サービスインからの1年であっという間に2200万人を獲得したPayPayが、いかにECでも経済圏の魅力を示せるかが、ZHDとしては今後の主戦場でしょう。

 店舗決済からオンラインECの展開シナリオは楽天と逆ですが、こちらもそう簡単な話ではありません。優良店だけを集めたPayPayモールは10月551店から12月785店に拡大し、Yahoo!ショッピングには出店していないコクヨやP&Gを招き魅力アップを図るものの、PayPayに倣い11月から始まった「PayPayモールで100億円あげちゃうキャンペーン」はどうやら期待を下回った模様。当初予定の1月末から3月末までと、開催期間を延長しています。

 Yahoo!ショッピングとPayPayモールのいずれかを使ったユーザーを分析してみると、カニバリゼーション(共食い)も気になります。単純に各サービスのユーザーを足し上げると楽天市場に迫りそうに見えるのですが、実ユーザーはYahoo!ショッピングのユーザー数とほとんど変わりません。PayPayをトリガーにZHDとしては大量の新規ユーザーを獲得したものの、ECへの誘導には難航中と見られます。

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図表 12 主要ECのユーザー(アプリとスマートフォン・PC各サイト合計の延べ人数。2019年10月-2020年1月、男女別)

 図表5のフリマ利用状況もそういう視点だと、ヤフオク!ユーザーのPayPayフリマへの流出と見えなくもありません。

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 ログと取扱高を見る限り3大ECに関しては消費増税の大打撃ということはなく、注目されたPayPayブランドもいまのところ市場への影響は限定的です。3月の楽天市場送料無料化、4月の楽天通信事業参入とオリンピック・パラリンピックへ向けた5G本格スタート、秋にはマイナンバー連携キャッシュバックとイベントは続き、当面増税の痛手を実感する機会は少ないかもしれません(その間に横たわる6月末キャッシュレスポイント還元事業終了が気になりますが)。

 このゆるやかな移行期間で消費者の支持を得たとしても年末以降キャッシュレスバブルの持続性は未知数ですが、巨大資本に裏打ちされたAmazonと通信キャリアのバトルという構図はおそらく変わらないのでしょう。ユーザーにとってはありがたい競合時代ながら、ベンチャーが輝きうる余地は残っていてほしいものです。

<TEXT/清水響子>

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している

【調査・分析データについて】
ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズが提供する、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用しました。データはヴァリューズ保有のAndroidスマートフォンモニター(20代以上)での出現率を基に、国内ネット人口に換算して推測しています。

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