新卒生え抜きに“出世”で負けた29歳営業マンの苦悩「実力主義の会社なのに」
「会社は実力主義を掲げているのになぜ、あんな奴たちを先に主任にするの!? 俺のほうがはるかに成績もいいのに…」。こんな不満を持つ29歳の男性がいる。中途採用で入社したのに、新卒で入った生え抜きの同世代の社員たちから主任に選ばれる者が数人現れた。そのことに嫉妬しているのだ。
今回は実際に起きた事例をもとに、実力主義について考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事コンサルタントによる解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したことをあらかじめ断っておきたい。
事例:転職グセに悩める29歳営業マン
中堅の商社(社員数800人)の営業部に勤務する向井直樹(仮名・29歳)の最近の口癖は、「あんな奴らが……」。この4月に同じ年齢の社員20人ほどのうち、数人がいち早く主任になった。いずれも新卒で入り、人事評価が高いことでよく知られるメンバーだ。
向井もまた、この1年の営業成績は20代の中では上位10%に入る。だが、中途採用で入り、まだ2年弱。この会社は3社目。語学を売りとする有名私大の外国語学部を卒業し、外資の金融機関、外資の小売に勤務し、一貫して営業に携わってきた。TOEICは900点を超える。
「入社時は、人事の担当役員や部長らが“うちは君が勤務していた外資のように実力主義だから、中途採用であろうとハンディはない”と言っていた。だけど、結局は新卒を優遇し、俺のような中途を軽く扱っている。あいつらは、英語もできない。こんなところに長くはいたくないよ」
今、密かに4社目の会社を転職先として探している。
実力主義の会社は本当に存在するか?
人事コンサルティング会社・トランストラクチャでは人事総務部長を務め、人事コンサルタントとしても活躍する久保博子さんに取材を試みた。久保さんはまず、こう答える。
「『実力主義だから、中途採用であろうとハンディはない』という捉え方もできるのかもしれないが、実際はそこまで言い切ることができない場合は多々ある。日本の場合は大企業、中堅企業、ベンチャー企業、外資系などいずれも実力主義とは言えないケースが少なくありません」