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「毎月10万円の一律給付を」コロナ禍に“バラマキ”が必要な理由を専門家に聞く

コラム

 蔓延防止等重点措置を適用する東京都だが、2021年7月11日から4度目の緊急事態宣言を発令することになった。終わりのないコロナ禍は、確実に私たちの生活を蝕んでいる。経済的に苦しんでいる人も少なくない。内閣府が2021年6月4日に発表したアンケート結果によると、不安を感じていることについて、実に4人に1人が「生活の維持、収入」(26.7%)と回答していた。

金欠 預金通帳

画像はイメージです(以下同じ)

 経済対策が喫緊の課題であることが浮き彫りになったが、駒澤大学准教授の井上智洋氏は、著書『「現金給付」の経済学』や『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(小野盛司氏との共著)にて、今の日本経済を立て直すための最善策として“現金給付”を挙げている。

 今なぜ現金給付が重要なのか、その原因から私たちができることまで話を聞いた。

政府は本気で国民をサポートする気があるのか?

 まず、「現金10万円一律給付(特別定額給付金)」「持続化給付金」など、コロナ禍で政府が実施してきた給付策について、井上氏は「理想を上げるとキリはありませんが、当初の予想よりは積極的にやっていると思います」と評価する。

「消費税増税や公共投資削減など、政府は“均衡財政主義”に基づいた政策を徹底してきたため、個人的には『一律の現金給付は絶対配布しないだろう』と思ってました。ただ、野党や国民からの批判による影響があるものの、さまざまな給付策を実施してきた点は評価できると思います。

 しかし、菅義偉政権になってから、給付策が減っているように思われます。2021年に入ってから緊急事態宣言の発令・延長を繰り返していますが、大胆な給付策は実施されていません。それどころか、2月に持続化給付金、家賃支援給付金を打ち切り、雇用調整助成金は5月から支給上限額の段階的な引き下げが始まり、2020年以上に長期に渡る自粛を強いているにもかかわらず、経済的なサポートを次々と削減しています

 さらには、菅首相は5月下旬、国民に向けた給付金について発表しましたが、対象者について『預貯金額が100万円以下』『ハローワークで求職中』など様々な条件を設けており、本気で国民をサポートする気があるのか疑わしいです

コロナ前から日本経済はどん底だった

井上智洋氏

井上智洋氏

 理想的な企業向けの給付金については井上氏はこう話す。

「企業向けの給付金として、中小企業に対して最大200万円の給付を行う“持続化給付金”がありました。ただ、中小企業と一括りしても規模は当然違いがあるため、適切な給付策とは言い難かったです。

 なので、各企業の規模に応じた給付策として、例えば、無条件で『15万円×従業員数』といった給付形式を採用すると良いかもしれません。『感染拡大が深刻な地域に限定』『従業員の定義の明確化』など議論の余地はありますが、様々な条件を設けて複雑化してしまうと大打撃を受けている企業を救えないリスクがあります。給付形式を可能な限りシンプルにしたうえで、一律での現金を給付することが望ましいです。

 こういう企業に対する救済策を提案すると、『潰れるのは経営が悪かったから』『ゾンビ企業なんて助けなくても良い』といった批判を受けることがありますが、コロナ禍という未曾有の事態を想定しながら経営することは不可能であり、経営難に陥った企業に自己責任論を振りかざすことに無理があります

 そもそも、新型コロナウィルスが感染拡大する前から、政府が“均衡財政主義”に基づいて経済政策を実施しようとした結果、日本はデフレ不況の長期化に見舞われました。政府の誤った経済政策の影響により、経営難に陥った企業は少なくありません。責任ということで言えば、政府の責任は重大です」

「現金給付」の経済学: 反緊縮で日本はよみがえる

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アフターコロナの日本経済を活性化するためには、政府が膨大な現金をバラまいて需要を喚起し、緩やかなインフレ好況状態をつくり出すことが必要だ。 日本経済の行き詰まりが指摘される今、金融緩和でも構造改革でもない「ラディカルな解決策」を注目の経済学者が、主流派経済学とMMT(現代貨幣理論)の両面から説く

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