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「毎月10万円の一律給付を」コロナ禍に“バラマキ”が必要な理由を専門家に聞く

コラム

財政支出を拡大し、市場にお金を流すことが大切

「現金給付」の経済学

「『現金給付』の経済学: 反緊縮で日本はよみがえる」(NHK出版、井上智洋)

 給付金の議論になると必ずと言って良いほど「財源の確保」が争点になるが、井上氏は「財源は問題ありません」と言い切る。

「財政破綻したギリシャと違って日本は“円”を発行できるため、財源について心配することは何もなく、所謂“国の借金”が膨らんだところで容易に返済できます。そのため、直ちに均衡財政主義を捨てさり、現金給付はもとより公共投資など財政支出を拡大し、市場にお金を流すことが大切です

 倒産や失業を理由に自殺者が増加傾向にあり、国民の命が危険にさらされている現状を直視せず、この期に及んでプライマリーバランスの黒字化(財政規律)を順守しようとしている政治家はクビにして良いでしょう」

 しかし、均衡財政主義に囚われた国会議員や官僚の考え方を改めることは難しい。

「国会議員や官僚は学歴が高く、エリート揃いのはずなのですが、それでもなお“個人”と“国家”を類似し、『借金は当然返すべきだ!』『支出を抑えて節約しよう』と考えている人は多く、今もなお国会のみならず国民の中でも均衡財政主義は根強いです。しかし、均衡財政主義が日本経済を停滞させたことは誰の目にも明白。今こそ、一律の現金給付を実施し、国民の命を守り、経済を活性化させなければいけません

Twitterで声を上げよう

 最後に一律の現金給付を実現するため、私たち国民ができることとしてTwitter世論の重要性を示す。

「昨年実施された現金10万円一律給付(が議論された際、政府は条件付きだったり給付ではなく貸与だったりなど、あの手この手で給付を拒んでいました。しかし、Twitter上で『一律給付を!』といった機運が高まったことにより、政府もあれだけ渋っていた現金給付10万円に踏み切りました。

 もちろん、Twitter世論が全てではありませんが、問題点があれば声を発し続けることが、より良い社会を実現する基本です。政治経済の動向を注視し、声を上げることが私たちに今できる運動だと思います」

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 現金給付の必要性だけでなく、均衡財政主義の危険性も浮き彫りになった。今年は衆院選が控えているが、均衡財政主義かどうかを注目して各政党、各候補者を見ると、良いのかも知れない。

<取材・文/望月悠木>

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている
Twitter:@mochizukiyuuki

「現金給付」の経済学: 反緊縮で日本はよみがえる

「現金給付」の経済学: 反緊縮で日本はよみがえる

アフターコロナの日本経済を活性化するためには、政府が膨大な現金をバラまいて需要を喚起し、緩やかなインフレ好況状態をつくり出すことが必要だ。 日本経済の行き詰まりが指摘される今、金融緩和でも構造改革でもない「ラディカルな解決策」を注目の経済学者が、主流派経済学とMMT(現代貨幣理論)の両面から説く

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