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失読症を乗り越え天職に。23歳「太神楽師」がYoutuberになったわけ

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「太神楽(だいかぐら)」という日本の伝統文化をご存知だろうか。古くは神事の一環として行われてきたが、寄席文化の普及にともない、現在は寄席の合間に行われる「寄席芸能」として知られている。

鏡味仙成さん

鏡味仙成さん

中学2年生で太神楽の道を決断

 そんな太神楽を演じる「太神楽師」と呼ばれる職業に就くのが、弱冠23歳の鏡味仙成(かがみせんなり)さん。太神楽は、「舞(獅子舞など)」「曲芸(投げ物など)」「話芸(掛け合いの茶番など)」「鳴り物(祭囃子など)」の四つの柱で構成されており、これらすべての技術を習得しなければ一流にはなれない厳しい芸能だ。

 仙成さんが太神楽という伝統芸能を愛し、仕事にする理由には、これまで苦しめられてきた「失読症」というハンディがあった(失読症:脳の損傷によって文字が読めない・読みづらくなる障害)。
 我々には馴染みのない「太神楽師」という仕事を、仙成さんは両親経由で知った。

「両親は寄席に行くのが趣味で、小学4、5年生の頃にはなんとなく太神楽師のことを知っていました。ただ、その頃は失読症のせいで文字をうまく読めず、学校の成績がほぼ全科目で最低評価。勉強を続けるのがあまりに苦痛で、『手に職をつけたい』と思い、中学2年生のときに太神楽師を目指そうと決めました。高校に行く選択肢は全くなかったです」

伝統芸能を目指すも「募集終了」に

鏡味仙成さん

 その後、日本芸術文化振興会(国立劇場の運営団体)が伝統芸能の保護を目的に行っている「伝統芸能伝承者養成事業」に目を付け、開講されていた太神楽の研修コースの受講を目指すも、思わぬ壁に阻まれる。

「太神楽コースの研修生は毎年募集されているわけではなく、不定期募集。応募資格は中卒以上だったんですが、私が中学3年生になった年に募集が終わってしまって……。募集は3年に1回あればいいほうなので、本当にショックでした」

 ただ、どうしても太神楽を学びたかった仙成さんは、当時の太神楽曲芸協会の会長を協会HPから見つけて直談判。すると、1か月に1回稽古をつけてもらえることに。この当時の会長というのが、現在の師匠である鏡味仙三郎さんだった。

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