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失読症を乗り越え天職に。23歳「太神楽師」がYoutuberになったわけ

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17歳の時に人前に立てるようになる

 師匠に稽古をつけてもらってから、太神楽師としてデビューするまでの経緯をこう語る。

「1か月に一度の稽古を受け、そこで学んだことを残りの日で自主練習し、また稽古を受ける日々を繰り返していました。すると、師匠から『見込みがある』と言われまして。師匠の推薦で先の太神楽研修コースに『受講生』という枠で入れてもらえました

 2年間の稽古を経て、17歳の時に「鏡味」の名をもらい、人前に立てるように。ただ、「落語家の場所である『寄席』で働くなら、落語のことを理解するべき」という師匠の方針で、1年間は前座としても活動したという。

 仙成さんにとっては偶然出会うことになった師匠だが、その人柄や太神楽師としての技術は素晴らしいものがあるそうだ。

「人柄も技術もとにかく素晴らしく、太神楽師である以前に、人としても尊敬できる師匠です。厳しさの中にも優しさがあり、若者相手でも決して威張ったりしません。出会いは偶然でしたが、この人が師匠で本当に良かったと思います」

太神楽の世界はまさに「天職」

鏡味仙成さん

師匠・鏡味仙三郎さん(写真右)

 結果的には運命的な出会いを果たした仙成さん。そんな師匠に稽古で厳しく指導されることもあったが、太神楽の道に挫折しそうになったことはないという

「太神楽は私にはずっと楽しめることしかなくて。挫折したことは今までに一度もなかったです。確かに厳しい世界ですし、失敗したときを考えるとプレッシャーを感じます。でも、私は失敗してもそれを原動力にできるタイプでしたね」

 今では、訓練を経てある程度普通に文字が読める状態に近づけたとのことだが、幸い太神楽の世界ではほとんど文字を読む機会がないそう。鏡味さんにとって、まさに「天職」だった。

「太神楽の世界なら、自分の実力だけで勝負できる。自分を認めてくれる居場所をやっと見つけた、と思いました。だから、多少のことがあってもすべてを楽しめるんです」

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