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ZOZO買収とPayPayでEC市場に挑む、ヤフーの勝算

ビジネス

 9月12日、ヤフー(10月1日から社名をZホールディングスに変更、以下ZHD)が、約4000億円を投じてアパレル専業EC最大手ZOZOTOWNを運営するZOZOの買収を発表。同時に退任を発表したZOZO創業社長・前澤友作氏の涙、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏の飛び入り参加など、会見も話題になりました。

スマホ クレカ

※画像はイメージです

Amazon、楽天、ヤフーの三強時代に

 2019年3月期におけるヤフーのEC事業の取扱高は1兆9517億円、ZOZOの商品取扱高は3231億円で、合計2兆円超。ZHDは7400ブランド1300店が参加するZOZOTOWNを手に入れ、2020年代前半に国内EC取扱高ナンバーワンを目指します。

 さっそく株式会社ヴァリューズによる国内ユーザー行動ログで主要総合ECユーザー数を確認。統合により単純に現ECのYahoo!ショッピング(年間ユーザー6580万人)が、ZOZOTOWN(年間ユーザー2360万人)を取り込んだとすると年間約9000万ユーザーの規模になり、ライバルAmazon、楽天市場と拮抗できそうです。

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図表1 主要EC及びアパレルのアプリ/サイトユーザー数と会員数(ユーザー数はアプリを含むスマートフォンとPCの合計、2018年10月-2019年9月。*はニールセンデジタルによる推計値、**はZHDのIR資料に基づくYahoo!プレミアム会員数)

 ZHDとZOZOは当面各ブランドでの事業を継続しつつ、ZHDが10月17日にリリースした新EC「PayPayモール」へのZOZOTOWNの出店、ZOZOTOWNのPayPay導入など、「ZOZOとヤフーにしか創れないカッコよくて便利なeコマースの未来」を描く方針です。ZHDは10月7日からヤフオク!と連携した「PayPayフリマ」もリリース。グループ力を活かしたEC事業のテコ入れを図ります。

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図表2 EC拡大を目指すZHDの戦略(ヤフー株式会社と株式会社ZOZO、共同記者会見プレゼンテーション資料より)

 月間6000万~7000万ユーザーが利用するAmazon、楽天市場には水を開けられてきたYahoo!ショッピング。単純にZOZOTOWNユーザーと合計してもまだトップ2強には届きませんが、それでも月間ユーザー4000万~5000万人は射程距離に入ります。

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図表3 主要EC及びアパレルのユーザー推移(スマートフォンとPCの合計。アプリを含む)とZOZOTOWNの年間購入者数(ZOZO業績ハイライトより。「年間」は各四半期決算時までの12か月)

 行動ログ上だと年間ユーザー2360万人、月間ユーザー数が1000万人程度で推移するなか、IR資料によるとZOZOTOWNの年間購入者数は812万人に上り、この1年以内に購入したアクティブ会員は、1人あたり年間平均11.3点、4万7000円弱を使うそうです。さらに会員歴が長いほど年間購入金額が増える傾向といいますから、ZHDにとって魅力的な顧客基盤に違いありません。

PayPayをテコにビジネスモデル転換

 総合ECといっても、売上手数料の点において、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングのビジネスモデルはすこしずつ異なります。楽天は初期費用、月額家賃(システム利用料)とも馬鹿にならない金額ですが、「楽天大学」などの店舗向け売上げアップ支援サービスが充実。出店審査も他のサービスより厳しいと言われています。

 AmazonとYahoo!ショッピングは初期費用や月額家賃が割安で、小口や新規の個人事業主、副業でも、比較的手軽に参入可能。Amazonは在庫管理や出荷の委託サービスもあります。そもそも日本だけに特化したECモデルではなく、離島でも送料無料で届く物流網と、豊富なコンテンツを揃えるAmazonプライムで他を圧倒しています。

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図表4 サービス比較(2019年10月現在。*キャンペーン及びストアポイント原資で必須。**はYahoo!プレミアム月会費の年換算でソフトバンクスマホユーザーは無料)

 Yahoo!ショッピングは2013年から「eコマース革命」と銘打ち、初期費用、月額費用、販売手数料を全て無料(ただし現在売上に対するTポイント原資最低1%とキャンペーン原資1.5%は必須)にして、広告で稼ぐモデルを展開してきました。その結果一時期90万店舗まで出店者が増えたものの、本気度の高いお店は限定的だったといわれます。

 2強に水を開けられるいま、ZHDが新たにリリースしたPayPayモールは「革命」前夜に回帰し、販売手数料3.0%を設定。ユーザー評価や返品・交換対応、リアル在庫連携などのサービスレベル、Yahoo!ショッピングにおける年間流通総額1.2億円以上、または店舗表彰制度受賞といったハードルを設けた「プレミアムなショッピングモール」です。

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図表5 PayPayモール(2019年8月2日ヤフー株式会社2019年度第1四半期決算説明会資料より)

 アカウント情報にはZHDグループ会員特典がズラッと並び、10月時点で筆者のポイント獲得率は11%。PayPayのお家芸であるポイント還元でユーザーの心を掴み、モール活性化により優良店との関係強化を図ると見られます。

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図表6 PayPayモールには、ZHD傘下のZOZOTOWN、LOHACOのほかENOTECA、dyson、GODIVAなど著名ブランドが出店。ソフトバンクやZHDサービスユーザーはポイント還元率アップ

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