本業の勤務時間外でも解雇に…勤務先での副業トラブル事例3つ
前職顧客への営業活動、引き抜き=競業行為の差し止め
【事例3】 1991年 新大阪貿易事件
===========================
内容:営業部長が同業の企業を立ち上げ、引き抜きや既存顧客への営業を行った
事由:退職前に結んだ競業禁止特約への違反が認められた
結果:上記の競業行為の差止め(企業側の勝訴)
===========================
営業部長の高山さん(仮名)は営業職として13年間勤務してきましたが、退職を決意。前職と同じ商品を取り扱う新会社を設立し、引き抜いた前職の社員も使って、既存顧客に対する営業活動を行いました。
売上減少などの不利益を被った元勤務先は、こうした高山さんの行動が競業行為にあたるとして差し止めを求め、提訴しました。退職前には元の勤務先と競業行為禁止の特約を結んでおり、この行動はそれに違反するものでした。
裁判では既存顧客の情報を前職で十分に引き継がずに、自身の新会社の営業活動に使ったこと、前職の部下を引き抜いて採用したことが特に問題視され、高山さんに「競業行為の差し止め」が言い渡されました。
こうした競業行為は、企業の利益を直接的に損なうものであるとして、在職中・退職後の一定期間は、企業は労働者に対して同様の制約を課すことは可能であることが、この判例で明かになっています。
本件は、退職後でのトラブル事例ではありますが、在職中に類似する競業行為を行えば、懲戒処分や損害賠償の対象となる可能性があるので注意が必要です。
今回は、会社とのトラブルが実際に裁判にまで及んだ事例をご紹介しました。
単純に副業をしているという事実だけでは裁判で懲戒処分が認められることがない一方で、会社の不利益になる行為と認定されれば、解雇・損害賠償が認められるということが過去の判例からも伺えます。
読者の皆さまも副業する際は、くれぐれもこうした点にご注意ください。
<TEXT/KT Total A&C firm>