夢の海外勤務の現実…半端ないシビアさと、赴任先で得たものとは
「仕事ができない奴」の烙印を押されて…
日常会話も満足に交わせず、愚痴を言える相手もいない。ただ自信を喪失していくだけの日々が始まりました。そして、日本にいると意識できない問題も生じたのです。
「時差があるって想像以上にしんどいんですよ。チャットツールは今の時代いくらでもありますし、相手は一緒に働き慣れた日本のメンバー。だからコミュニケーションの心配はないと思っていました。ですがそれが逆にしんどかったです。
向こうの営業開始時間は、こっちでは終業間際なんですよ。だけど、そのタイミングでチャットがどんどん飛んでくる。見てしまったら返事しなきゃ、タスク処理しなきゃって思っちゃいますからね。結局夜中まで働くことになることも多々ありました」
高山さんの場合、日本のオフィスとの調整業務が多く、渡米したとはいえ業務で使うのは主に日本語。成長感も感じられずアメリカに来た意味を悩むことも多かったそうです。
「アメリカで働いていたら勝手に英語が話せるようになると思ってました。そんな夢のようなことは起こりませんでしたね(笑)」
日本で英語の勉強をして渡米した高山さんですが、ネイティブの英語には刃が立たず。円滑なコミュニケーションが取れないため、さらにストレスが溜まることに。
ただ生活しているだけでは「英語力」は養えない
結局プライベートな時間を削り、夜中まで英語の勉強をしたそう。慣れない環境な上に、帰宅後は夜中まで勉強漬けの日々。当然友人ができることもありませんでした。
「1年たった今では、生きた英語が多少は身につき少しは友人もできた。そこは感謝してますけどね。自ら努力しなかったら、ほとんど英語力上がらなかったんじゃないかな。日本では、海外在住歴が長ければ長いほど“海外経験がある”って評価しますよね。でも、ただ住んでるだけでは何のスキルも身につかない。それなら日本でビジネスの最前線にいた方がよほどスキルアップになるはずです」
海外転勤できれば、ガラッと生活が変わり、経験値が自ずと上がると期待する人も多いのではないでしょうか。しかし、高山さんは海外転勤で与えられるのはあくまで環境とそして試練だけだったんだと気づきました。
「英語は日本にいたとき以上に勉強しないとついていけないし、仕事も日本にいたときより高い生産性でやらないとアウトプットは下がる。プライベートも積極的にアクションをしないと何も起きないんです。正直しんどいことだらけでしたね(笑)」
現実の海外転勤生活は、描いていたものとずいぶん違っていました。高山さんは、1年ほどアメリカでの生活を送りましたが、会社を退職し帰国することにしたそうです。海外転勤はもう懲り懲り、とか。