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デニム兄弟とは?大学生の行商から始まった倉敷・児島の街づくりビジネスがアツい!

デニム兄弟とは?大学生の行商から始まった倉敷・児島の街づくりビジネスがアツい!

岡山・倉敷の児島といえば、国産ジーンズの聖地。そんな児島で、デニムブランドの立ち上げから、宿泊施設・飲食・サウナ・レストハウス・ギャラリーと、多角的な展開をしているのが「デニム兄弟」こと株式会社ITONAMI(イトナミ)の山脇耀平さん、島田舜介さん兄弟です(兄弟で名字が違うのは弟が母方の姓を継いだため)。今回は代表の山脇耀平さんに、これまでの歩みとこれからの展望についてお聞きしました。

ものづくりの現場の魅力を発信する活動からスタート

株式会社ITONAMI(イトナミ)の山脇耀平さん、島田舜介さん
山脇耀平さん(左)と島田舜介さん

――兵庫県ご出身とのことですが、なぜ岡山・児島でビジネスを始めたのですか?

山脇:きっかけは、弟の島田が大学進学で岡山に行ったことです。特に理由もなく選んだ土地でしたが、どうせなら地元の産業に関わってみようと調べる中で、デニム産業の盛んな児島を知りました。僕たち兄弟はアメカジ世代の父の影響でジーンズが身近にあったので、興味を持ち、弟が工場見学に行ったのが最初の出会いです。

――最初からブランドを立ち上げたわけではなかったんですね。

山脇:はい。最初は、工場や職人さんへの取材を通じて、ものづくりの現場の魅力を発信する活動から始まりました。僕は関東の大学にいたので、取材音源を文字起こししたり、SNSで情報発信したり、遠隔で支えていました。

ITONAMIのショップ
ITONAMIのショップ

――そこから、どのように事業化していったのですか?

山脇:情報発信を続ける中で、工場の抱える課題――担い手不足やアパレル業界の構造的な問題――にも触れるようになったんです。発信だけでなく、商品づくりという形で関わりたいと思い、2015年にブランドを立ち上げました。工場の職人さんの声を反映した商品開発を軸に、クラウドファンディングでスタートしました。

デニムブランドから宿泊施設や飲食・サウナへ拡大

DENIM HOSTEL floatの客室
DENIM HOSTEL floatの客室

――宿泊施設『DENIM HOSTEL float(デニムホステルフロート)』をオープンした経緯を教えてください。

山脇:ブランド立ち上げ後は、兄弟で東日本・西日本に分かれてイベント販売をしていました。週末販売を続ける中で、「地域に滞在し、学ぶ時間が欲しい」と考え、キャンピングカーで全国を巡る旅を始めたんです。2019年、児島で見つけた元保養所の建物に惚れ込み、宿泊施設として再生しました。デニムブランドと宿を両輪に据えたのが、次のステップでした。

DENIM HOSTEL float内のカフェpile
DENIM HOSTEL float内のレストランpile

――その後、飲食事業やサウナも展開されていますよね。

山脇:旅の中で得た「地域との関わり」を、施設に来てくださるお客様にも届けたいと思ったのがきっかけです。地元食材を使った食事提供の場としてカフェを開き、撥水性のあるデニム素材を生かしたサウナ着を紹介する場として、サウナ施設を導入しました。体験を通じて、モノの大切さや背景を感じてもらえる空間を目指しています。

DENIM HOSTEL float内の浮サウナ
DENIM HOSTEL float内の浮サウナ

――10年の歩みの中で、一番大変だったことは何ですか?

山脇:施設運営が軌道に乗り始めた2020年春、立ち上げメンバーが全員卒業してしまったことです。運営できる人がいなくなり、一時はどうなるかと……。でも、ちょうど新しい仲間と出会い、社員第1号として加わってくれました。兄弟間の「あうんの呼吸」では通用しない場面も多くなり、仲間とどう協働するかを改めて学ぶ転機になりました。

「児島ジーンズストリート」にギャラリーをオープン予定

鷲羽山レストハウス
鷲羽山レストハウス

――2025年には新たな取り組みも始まっていると聞きました。

山脇:今年4月から、「鷲羽山レストハウス」の指定管理を担っています。ここはもともと観光施設だったのですが、地元の人があまり行かない場所でもありました。地元の人も誇りを持って案内したくなるような場を目指してリニューアルし、岡山や児島のものをセレクトした土産店や、地元食材を使ったメニューを提供するレストラン、DENIM HOSTEL floatの隣にある本屋aru(アル)の2号店も展開しています。

――さらに「児島ジーンズストリート」にギャラリーもオープン予定だそうですね?

山脇:はい、8月頭を予定しています。ギャラリーでは、児島だけでなく日本各地の技術や背景が面白いと思えるブランドを展示・販売します。奥には庭の見える畳の空間があり、軽食やお茶を提供する予定です。ジーンズ好きな人だけでなく、家族連れや初めての人も気軽に楽しめる場にしたいと考えています。

――今後の展望や野望があれば教えてください。

山脇:最終的には、児島がもっと「泊まりたくなる街」になればと思っています。今は日中だけ訪れて帰ってしまう人が多いので、滞在してもらえるような仕組みを増やしていきたいです。そのためにも、これまで以上に地域に根を張り、他の事業者さんと連携しながら挑戦していきます。

――10年前と変わらぬ志を感じます。

山脇:ありがとうございます。ジーンズにまったく興味がなかった自分たちが惹かれていったように、「興味の入り口」を増やすのが自分たちの役割だと思っています。その結果、児島全体がもっと元気になればうれしいです。

ITONAMI

DENIM HOSTEL float

鷲羽山レストハウス

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