「emoji(絵文字)」は日本生まれの発明品!ピクトグラムや漫画の影響も【実は日本が世界初】

私たちが日常生活で当たり前のように使っている多くの技術や製品。それらの中には、実は日本で最初に開発され、世界中で普及したものが少なくありません。そんな意外と知られていない「日本が世界初」な技術や製品を紐解き、それが生まれた背景や世界に与えたインパクトなどをクローズアップします。今回は、皆さんも今日、まさに使ったと思われる絵文字を紹介します。
日本で誕生した絵文字が世界中で定着
普段、絵文字を使いますか? 若い人のほうが絵文字を使う、男性よりも女性のほうが絵文字を好む、外交的、開放的な人ほど絵文字を使うなど、絵文字の使用頻度に関する調査によれば、個人差があるみたいですが、人生の中で一度も絵文字を使った経験がないという人は少ないはずです。
当たり前ですが、この絵文字、学校の国語の教科書で読む古文だとか漢文とかに存在しない文字なので、いつかのタイミングで使われるようになった文字だと予想されますが、一体いつ生まれたのでしょう。
実は、この絵文字、現代に通じる絵文字の始まりという意味では、日本で生まれたとされています。
具体的には、1999年(平成11年)、株式会社NTTドコモの携帯電話端末対応のインターネット接続サービスである〈iモード〉の開発時に、当時の開発企画者だった栗田穣崇さんという方(現・株式会社ドワンゴ取締役)が、3人のチームでつくりあげた発明なのだとか。
その開発背景には、文字中心の短文では文意の誤解が生じやすいという問題がありました。そこで、開発者たちが、顔の感情表現(顔文字)以外にも、天気、食べ物、乗り物、建物など暮らしに不可欠な情報を、12ドット×12ドットのシンプルな図案で176パターンつくりました。
まさに、この時に誕生した絵文字が、開発者たちの予想をはるかに超え、世界中で定着していったのですね。その偉業は、2016年(平成28年)に、ニューヨーク現代美術館(MoMA)に、収蔵されるまでになりました。
ピクトグラムの進化系である絵文字
そもそも、この手の感情表現には、どのような歴史があるのでしょう。
視覚的な感情表現という意味では、1963年(昭和38年)に、 スマイリーマーク(☺)がアメリカで開発されています。ある企業の従業員のやる気向上を目的としてデザインされた経緯があるそう。
その後、コンピューター上で、感情を表現する横向きの顔文字(エモーティコン)が1980年代のアメリカで生まれます。:-) 、:-(などの表現ですね。その顔文字が数年後、正面を向いたかわいい顔文字として日本で独自に進化します。
以上のような下地があった上で、グラフィックスとしての絵文字(画像アイコン)が1999年(平成11年)に栗田穣崇さんらによって開発されます。
誕生初期には、10代の若者たちの間で爆発的なヒットを呼び、2009年(平成21年)にUnicodeの5.2に176の絵文字が正式登録されると、世界中で使用される汎用文字となりました。
Unicodeとは、異なる言語、異なるコンピューター間で文字化けを起こさないように、世界中の文字が同じ基準で使えるようにした国際規格で、アメリカの非営利団体が管理しています。
このUnicodeは、バージョンアップのたびに新しい絵文字を追加していて、2024年(令和6年)9月にリリースされたEmoji 16.0の段階で3,790文字のバリエーションに達しています。
ちなみに、このUnicodeは、1995年(平成7年)の段階で76のピクトグラムを登録しています。ピクトグラムとは、「トイレ」などの意味や情報を視覚的な絵(記号)のみで伝える表現手段を言います。
絵文字の登録よりも4年早い登録なのですが、あくまでもこれらはピクトグラムであって、後に世界の共通言語となる「emoji」とは異なるという見方が一般的です。
CNNの取材によると栗田穣崇さんは、絵文字を開発するにあたって、ピクトグラムや漫画などからインスピレーションを受けたと語っています。その意味で、絵文字(emoji)は、ピクトグラムの進化系であり、絵文字そのものは、日本で生まれたと見られているのですね。
この記事を読み終わった後も、絵文字は日常的に使うと思います。
その使用のたびにこれからは、日本で生まれた文字であり、その初期の絵文字は、ニューヨーク近代美術館に収蔵されていると考えてみてください。いつもよりもちょっと、感慨深く絵文字が使えるかもしれませんよ。
[文/坂本正敬]
[参考]
※ The history of the 5 billion emojis used every single day – World Economic Forum
※ 年齢,性別とパーソナリティによる絵文字利用の個人差:10代と20代のSimeji利用者に対するアンケート調査から
※ Shigetaka Kurita Emoji 1998-1999 – MoMA
※ Shigetaka Kurita: The man who invented emoji – CNN
※ 絵文字(emoji)はどのように生まれ、世界に広がったのか? – Public Relations Office