bizSPA!

自分を磨き「人儲け」をする大切さ – ヨシダソース創業者の波乱万丈な人生に学ぶ

スキル
『でっかく、生きろ。世界をつかんだ男の「挑戦」と「恩返し」』 吉田潤喜、望月俊孝著 きずな出版 1,980円(税込)

ライフワークとしてブックレビューを長年執筆する経済ジャーナリストが、話題の本を紹介。今回は、 アメリカンドリームを体現する男、ヨシダソース創業者でヨシダグループ会長兼CEO、吉田潤喜氏の著書『でっかく、生きろ。世界をつかんだ男の「挑戦」と「恩返し」』 (きずな出版)です。

ヨシダソースでアメリカを席巻した吉田潤喜氏の半生

アメリカで生活したり旅行したりした人なら、たいていのスーパーや量販店でヨシダ・グルメソースが並んでいる様子を目にしたことがあるだろう。 本書はアメリカで成功したビジネスマンとして知られる吉田潤喜氏の半生を紹介する。ヨシダソースは日本でも量販店などで入手できる。プロの料理人にも評価される味でアメリカを席巻した立志伝中の人物である。

子供の頃、右目を失明するアクシデントに遭いながらも、夢を追い求めて500ドルを手に単身アメリカに渡った。なけなしの金で買った中古車で車中泊する貧しい生活を送りながらも、 空手の経験を生かして道場を開く。 そこでふるまった自作のソースが評判を呼んだことから商品化を思い立ち、今や全米で知らない人がいないほどのソースブランドを築き上げた。

不法滞在者でありながら、人の運と行動力で成功

華麗なる成功物語に見えるが、実際のところ吉田氏の半生は波乱万丈続きだったことが本書を読み進めるとわかる。1週間に6日働いて90ドルの生活。身分的には不法滞在者であり、いつ強制送還されるともわからない身の上だった。それでも吉田氏を助けようと手を差し伸べてくれる人の運にも恵まれ、彼らの協力を得てビジネスを成功させていった様子が描かれる。

その背景には吉田氏のたぐいまれなる行動力があった。著者は10秒と記すが、ひらめきを大切にして短時間で物事を決断し、可能性を感じたら突進する。その行動力が吉田氏を支えてきた。

ビジネスの場面でもそれは存分に活かされる。量販店のコストコに縁を得て、同社を通じてソースを販売したことが成功の足がかりになった。また、一方的に値上げを通告してきた日本の大手醤油メーカーとの対決など印象的な場面も多く、本書は読みどころ満載である。

ビジネスは「人」から学んだ

本書で吉田氏が強調する「『人儲け』の大切さ」という言葉は印象的である。お金は自分自身の価値を人がどれだけ認めてくれたのかを測れる大事なバロメーターであり、自分を磨き、人との関係をしっかり築く「人儲け」の大切さを教えてくれると説く。

吉田氏は「ビジネスはどこで学びましたか」と聞かれることが多いが、一番学んだのは「人」からだったと本書で記す。 中でも一から創業したオーナー社長の教えは印象に残ったという。オーナー社長だけが持っている人との接し方や考え方など「人間のプロ」としての在り方を学ぶことができたと記す部分は大いに共感できる。

一筋縄ではいかなかった吉田氏の道のり

本書では自身の失敗についても隠さず紹介する。 吉田氏は1995年にスノーボード事業に乗り出したが、結局赤字が止まらず断念した。 成功するのではないかという自分の考えから逃れられなかったという。 吉田氏は、「事業に惚れすぎて、我を忘れるなという大きな教訓が残った」と振り返る。

ビジネスでの成功でまさにアメリカンドリームを体現したともいえる吉田氏だが、これまで4回破産しかけて、一時は自殺寸前まで追い込まれたという。決して一筋縄ではいかなかった吉田氏の道のりは、これから何かに挑戦しようとする多くのビジネスパーソンの参考になるだろう。聞き手を務めた共著者の望月俊孝氏の解説と合わせて読むと、世代を問わず元気がもらえる力作である。                         

『でっかく、生きろ。世界をつかんだ男の「挑戦」と「恩返し」』 吉田潤喜、望月俊孝著 きずな出版 1,980円(税込)

在京の大手メディアで取材記者歴30年。海外駐在も経験。

人気タグ

おすすめ記事