コーヒーやラーメンのサイドメニューを最初に始めた回転ずしはどこ?【実はここが日本初】

私たちが当たり前のように受け入れているサービスや商品には「最初に始めた場所」が必ずあります。この連載では、日本で初めて生まれたモノや仕組みに注目し、その背景や影響をひも解いていきます。今回は、多くの人が大好きなすしの世界、特に回転ずしの世界で、今では業界に定着したサービスの起源を紹介します。
日進月歩の勢いで進化・発展を遂げている業界
すしを食べようと思った時、回転ずしに行く人は少なくないと思います。
ある民間の調査(2021年)では、すしを食べる時に「どのような(場所・種類の)すしを食べるか?」との問いに、外食・回転ずしと答える人が6割以上存在すると明らかにされています。
当然ながら、人気の回転ずし業界では、さまざまな企業が競争を続けています。そのため、日進月歩の勢いで進化・発展を遂げているような印象を受けますが、いかがでしょうか。
例えば、サイドメニューのバリエーションも今では目移りしてしまうほど豊富です。デザートのケーキやパフェに始まって、ラーメン、コーヒーに至るまで、およそ「すし」とは無関係のように思える食品まで回ってくる状況は当たり前になりました。
一部の回転ずしチェーン店では、食べた皿の数に応じて景品の当たるゲームができたり、誕生日のサプライズ演出として、パレードのような装飾がレーン上で席まで到着したり。
おいしいすしを前提に、豊富なサイドメニュー、その飲食体験をさらに豊かにする数々の仕掛けが用意される現代の回転ずし店に、エンターテインメント性の高いテーマパークのような印象すら受ける人もいるのではないでしょうか。
ラーメンの提供はくら寿司で始まった
そんな回転ずしの世界で、今では当たり前になったサイドメニューの数々は、どうやって始まった歴史があるのでしょう。
例えば、サイドメニューのひとつであるラーメンは、2012年(平成24年)にくら寿司が導入しています。

くら寿司の担当者いわく、ファミリー層などさまざまな顧客を楽しませようとする中で、サイドメニュー拡充の動きが生まれ、専門店を超える味を追求した「7種の魚介醤油らーめん」をリリースした経緯があるのだとか。
「もともと弊社には、だしをおいしくとる技術がありました。その技術を活用して、構想から商品化まで約10年をかけ、独自のラーメンを開発しました。
もちろん、日本のどこかの回転ずし屋さんで、ラーメンを出していた事例はあるかもしれません。しかし、大手の回転ずしチェーン店の中で、レギュラーメニューとしてラーメンを出したお店は、くら寿司が業界初(日本初)です」(同社担当者)
同社でいえば、大手回転ずしチェーンとして業界で初めてコーヒーを出した実績もあります。

「コーヒーを出したタイミングは、セブン-イレブンさんがコンビニコーヒーを出した時期とほぼ変わりがありません。
セブン-イレブンさんは、2013年(平成25年)7月にコンビニコーヒーの全国展開を完了していますが、弊社も同年の末、プレミア珈琲〈KURA CAFE〉を業界で初導入し、お客さまに提供しています。ずっと準備していたので『先にやられた』という声が社内で起きたくらいです」(同社担当者)
その背景には、男性客の多かった回転ずしが、ファミリー層へと広がり、さらに若い女性グループにも利用されるようになって、カフェのように回転ずしが利用されるニーズの変化があったそう。
その後、コーヒーの提供は他社でも進み、例えばスシローでは、コーヒーの提供にとどまらず、スシローカフェ部が2017年(平成29年)に立ち上がりました。
翌年には、スシローカフェ部 表参道スイーツテラスといった、カフェメニューのみのポップアップショップが業界初で登場するなど、双方の直接的な影響の度合いは未確認ながら、業界内の切磋琢磨(せっさたくま)が推察されるような状況が起きています。
ダイニングエクスペリエンス(食の体験)をいかに高めるか
メニューの進化だけではありません。回転ずし業界における、オペレーションやサービス体験の進化も止まりません。
近年の回転ずし業界のニュースといえば、デジタルビジョンと回転レーンを組み合わせた〈デジタル スシロービジョン(デジロー)〉の登場ではないでしょうか。
ボックス席やカウンター席に、大きなデジタルビジョンが設置されていて、モニター表示される回転ずしをタッチして注文する仕組みです。

“回転すし本来の楽しさを、デジタルを活用して再現しながら、これまでにない店舗体験を楽しむことのできる“一歩先の回転寿司””(PR TIMESより引用)
として提供されているみたいです。「これまでにない店舗体験」と言えば、くら寿司の〈ビッくらポン!〉を思い出す人も多いはずです。

同サービスの誕生は、同社の「水回収システム」に端を発します。
テーブル上の皿回収ポケットに、食べた後のすしの皿を投入すると、食後の皿を水流が回収してくれる独自のシステムを1996年(平成8年)に業界初で同社がまず導入しました。
その「水回収システム」にゲーム的な要素が加わります。利用客が皿を入れると、5皿に1回抽選ゲームが始まって、当たりが出たら景品がプレゼントされるビッくらポン!が2000年(平成12年)に業界初で導入されました
こうした取り組みの背景には、エンターテインメント性を追求する企業の姿勢が存在するそう。
「くら寿司ではそもそも、エンターテインメント性が大事にされていて、社内会議などでも、サービスの名前が面白いか、インパクトが強いかなどが重視されています。
現在は、スーパーマーケットなどでもレベルの高いすしが食べられます。
そのような状況の中で、いかにお店に足を運んでいただくか、付加価値をどのように高めていくか、ダイニングエクスペリエンス(食の体験)をいかに豊かにしていくかを常に意識しています。
外食店であるくら寿司は、飲食業界の前にサービス業に所属しています。サービス精神を徹底して『この値段でこんなにおいしい物が食べられるのか』とお客さまをこれからも驚かせていきたいです」(同社担当者)
くら寿司と言えば他社と比較して、より多くのおすしがレーン上で回っていると感じる人もいるのではないでしょうか。
今では、回転ずし店のレーンは、注文の入ったすしを客席まで届けるためのツールになりつつある印象を受けます。しかし、くら寿司はあえて、寿司カバーやICTでの衛生品質管理を駆使しながら、リアルなおすしをレーン上で多く流すオペレーションにこだわっているそうです。
その背景には、「動く食べ物はおいしく見える」という動物的な感覚を刺激し、ダイニングエクスペリエンスを高める狙いがあるのだとか。
「デジロー」のように、デジタルの楽しさに向かう企業もあれば、あえてリアルにこだわる企業もあります。
それぞれの戦略の中で今後も、回転ずし業界の進化・発展は続き、その過程で、業界初の取り組みが今後も次々と実施され、後のスタンダードになっていくと考えられます。
ビジネスパーソンとしては、それらの取り組みをユーザーとして楽しみつつ、サービスの背景にある狙いや創意工夫を学び、自分のビジネスのヒントにする姿勢を持つと、さらに感動体験が深まるかもしれませんね。

[取材・文/坂本正敬、写真提供/くら寿司]
[参考]
※ カンタン!見やすい!楽しい!大型タッチディスプレイ「デジロー」9月は、三重・奈良に初登場!その他、千葉・福岡を含め計4店舗に導入! – FOOD & LIFE COMPANIES
※ スシロー、デジタル回転レーンを試験導入 「選ぶ楽しみ」を再現 – 日経XTREND
※ 回転寿司で本格コーヒー!? くら寿司がカフェを始める狙いとは? – ITmediaビジネス
※ 「デザートまでスシロー。スイーツだけでもスシロー」を定着させたい – 宣伝会議