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チームを勝利に導くプラス思考とは?慶應野球部メンタルコーチが語る勝てる習慣

学び
『強いチームはなぜ「明るい」のか』 吉岡眞司著 幻冬舎新書 1,034円(税込)
『強いチームはなぜ「明るい」のか』 吉岡眞司著 幻冬舎新書 1,034円(税込)

ライフワークとしてブックレビューを長年執筆する経済ジャーナリストが、話題の本を紹介。今回は、 慶應義塾高校野球部のメンタルコーチを務めている吉岡眞司氏の著書『強いチームはなぜ「明るい」のか』 (幻冬舎新書)です。

ポジティブな言葉が飛び交うチーム

本書は勝負に勝てるチームや組織にどんな特徴が備わっているのかを事例をあげて分析した。2023年夏の高校野球甲子園大会で優勝した慶應義塾高校のケースを中心的な題材として引用し、明るいチームに見られる7つの特徴を示している

詳細は本書を参照していただきたいが、個々のメンバーが自分の役割や立場を自ら考えて主体的に行動することや、メンバー同士が互いに尊重し合い、思いやりや感謝の気持ちを持っている点などをあげる。具体例として、慶應高校のチームの中には「ありがとう」などのポジティブな言葉が飛び交い、ホームランを打たれた時でも、相手バッターに向かって敬意を示す拍手をしていたエピソードが紹介される。

著者のいう「明るい=雰囲気のいい」チームとは、目標に向けて一人ひとりがコツコツと努力し、仲間がミスしても、なじったり怒ったりすることなく励まし、勇気づける言葉を出せているチームをさす。

脳を「だます」ことでパフォーマンスを最大化

では、こうした明るさはどこから生まれてくるのか。著者は「心の状態を自らコントロールし、どんな状況でも自分の持つ力を100%発揮できるように努めること」からであると指摘する。それが「ありがとう」の言葉や相手チームへの拍手に通じるという。

心の状態をセルフコントロールする意味について著者は、脳を「だます」ことでパフォーマンスを最大化できるという。肯定的な錯覚を起こす=うまく脳を「だます」ことで、マイナスに傾いた心をプラスの状態に引き寄せることができるという考え方である。

そのためには、少しでもいいから日常に取り入れて実践し、習慣化することだと著者は説く。慶應高校の選手も素直にトレーニングに取り組み、 グラウンドだけでなく、学校や自宅の日常生活でも実践していたからこそ、持てる能力以上のパフォーマンスを発揮できたと指摘する。

重要なのは大事な場面で感情をプラスに転じること

著者によると、心の振り子は常にプラスとマイナスを行き来するが、重要なのは大事な場面で感情をプラスに転じることだという。人々はマイナス思考に陥りがちだが、マイナスに入った状態をプラスに振るためには、ポジティブな言葉で脳内にプラスのイメージや感情を呼び起こせばいいと本書は記す。

実践例として、気分が今ひとつ上がらないと思ったときには、プラスの言葉を口にすることを著者はすすめる。プラスの出力を続けることで、脳が勝手に肯定的な錯覚を起こし、 ポジティブな状態にコントロールできるという。

成功する人に共通する特徴は、成功すると信じ続けていること

著者はスポーツや試験、仕事に限らず、成功する人に共通する特徴は、成功すると信じ続けていることだと説く。 さらに、大きな夢の実現には小さな変化の積み重ねが必要だという指摘も参考になる。目標をすぐに行動できるレベルまで細分化して実践することが大切で、それが習慣化されることで目標の実現に近づいていくという。

さらに、プラスの感情は一人だけでなくチーム内に広がる特徴を持っており、チーム全体の雰囲気を高める効果があるゆえに、チームのリーダーこそ、率先してプラスの言葉や感情を発することが大切だという著者の指摘にはうなずかされる。本書はチームで仕事やプロジェクトに取り組んでいる若いビジネスパーソンにとって良き指南書となるだろう。

『強いチームはなぜ「明るい」のか』 吉岡眞司著 幻冬舎新書 1,034円(税込)

在京の大手メディアで取材記者歴30年。海外駐在も経験。

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