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教育費が全額キャッシュバックも!経済産業省の支援するリスキリング制度ってなんだ

全国の労働者を対象に、資格取得と転職を働きながら同時に目指せる仕組みがあるとご存じだろうか。

いわゆる、経済産業省の施策「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」だ。

新しいスキルを身に付け、新しいチャンスを労働者に手にしてもらう(人材の流動性を高める)狙いをもった仕組みで、スキルを身に付ける際に発生した費用の最大50~100%が戻ってくる。

さらに言えば、相談から申請手続き、資格取得、転職までを一貫してサポートしてくれる民間の支援事業者まで存在する。夢のような話にも聞こえるこの制度は一体、どのような仕組みなのか。

そこで今回は、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に参画し、支援事業を提供する株式会社キャリア(東京都世田谷区)に、制度利用の仕組みを聞いてみた。

働く人の再教育や新しい就業先探しをサポートする制度

あらためて、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」とは何なのかをおさらいしてみる。長めの引用になるが、制度の中身は次のような感じだ。

“在職者が自らのキャリアについて民間の専門家に相談できる「キャリア相談対応」、それを踏まえてリスキリング講座を受講できる「リスキリング提供」、それらを踏まえた「転職支援」までを一体的に実施する体制”(経済産業省 リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業より引用)

要するに、成長の機会から転職のチャンスを、ワンセットでサポートしてもらえる仕組みだ。経済産業省は制度を用意する側で、働く人の窓口は民間の専門家が担う。

例えば、今回話を聞いた株式会社キャリアのような場所が「民間の専門家」に該当する。同社の広報担当者によれば、

「弊社は、人材派遣業に16年間携わっている実績があります。蓄積したノウハウを生かし、経済産業省の施策『リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業』に参画して、キャリアアップ支援事業〈キャリアスマイルケアカレッジ〉を開始しました」

と言う。〈キャリアスマイルケアカレッジ〉では、資格取得の相談から、資格取得に要する費用支援のための申請手続き、新しい仕事の紹介までを一気通貫でサポートしてくれるという。

支援業者のサービス利用の流れ(一例)。画像提供は株式会社キャリア

さらに、同社の場合、〈キャリアスマイルケアカレッジ〉の拠点を北海道から沖縄まで全国30以上の場所に置き、現地の資格取得スクール運営会社と事業提携して、資格取得のサポートと転職支援が受けられるサービスを用意しているという。

もちろん、同社だけではない。この手の支援事業者は他にも多く存在し、それぞれの強みや特徴を生かして、働く人の再教育や新しい就業先探しをサポートしてくれる。

以上が、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」のあらましだ。

受講費がまるまる戻ってくる場合も

さらに、冒頭でも書いたように、教育費についてもキャッシュバックがある。

経済産業省の補助に加えて、支援事業者独自の補助が用意されている場合もあり、リスキリングに費やしたお金が全額戻ってくるケースすらあるらしい。

「対象となる資格を取得すると、経済産業省の施策では受講費用の1/2相当額。講座を受講して転職し、転職先で1年間継続的に就業していると確認されれば追加で受講費用の1/5相当額が補助(キャッシュバック)されます。

終了期間は未定ですが、弊社の場合は独自の補助金もあります。

弊社の場合、弊社対象の資格を取得後、弊社の派遣スタッフとして本事業の対象事業所へ転職し、転職先で1年間継続的に就業いただくと、残りの受講費を全額補助(キャッシュバック)する予定です」(株式会社キャリアの担当者)

具体的に計算してみよう。例えば、リスキリングのために6万円の講座を受講したとする。

その場合、経済産業省の施策では、受講費用の3万円が補助される(1/2相当額)。

さらに、受講・資格取得を経て転職し、1年間継続して転職先で就業すると1万2千円が補助される(1/5相当額)。

それだけではない。独自の補助金を用意する支援事業者で教育・就業支援を受けた場合、残りの1万8千円までキャッシュバックされるケースも出てくる。

要するに、受講費の6万円分がまるまる戻ってくる計算だ。

受講費の貸付を検討する支援事業者も

ただ、この制度を実際に利用する際には幾つか注意点がある。

例えば、経済産業省のリスキリング支援を受ける時点で「就業している人」が制度の対象者となる。仕事を辞めてしまった状態では制度を利用できない。

一方で、働いている人も、働きながらの受講になる。

例えば、株式会社キャリアが就業支援を得意とする介護・看護業界の場合、新しい資格取得に必要な期間は、週1回の受講ペースで、4カ月ほどが一般的な目安になるという。

もちろん、平日2~3回通うコースでは、1カ月半~2カ月ほどで(資格によっては)取得も可能だというが、働きながらのスケジュール調整になるため時間管理もかなり大変になる。

これらの問題をクリアするために、リスキリング支援を希望する人は、どうすればいいのだろうか。

「弊社の場合、離職中の方からもご相談を受け付けております。

リスキリング支援が受けられない方の場合、派遣社員として就職先を弊社で紹介し、就業状態になっていただいた上で制度利用を目指すなど、何らかの方法があるかもしれません。

スケジュール調整についても、働きながら資格取得を目指すとなると、仕事と勉強のバランス調整が大変になりますので、弊社の場合、資格取得に向けたスケジュール調整を担当スタッフがサポートさせていただきます」(株式会社キャリアの担当者)

受講後に返金されるシステムだと金銭的に難しい人には同社の場合、受講費の貸付も検討中との話だ。貯蓄額がそれほど多くない傾向にある若手ビジネスパーソンにとってありがたい話ではないだろうか。

bizSPA!フレッシュ読者のような若い世代こそ、異業種転職が歓迎される傾向もあるらしい。

「異業種からの転職の場合、若い方の方が、初めてのルールや業務になじみやすい傾向があります。

例えば、弊社が就業支援を得意としている看護や介護の業界では、覚えが早く体力的に余裕のある若い方こそ現場で歓迎されるケースが少なくありません」(株式会社キャリアの担当者)

もちろん、いきなり飛び付くと危険だ。軽率な行動が、人生全体のキャリアに悪い影響を与えてしまう恐れもある。

ただ、何か夢があり、その夢の延長線上に、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業の制度利用の可能性がある場合は、自分にとって最適な支援事業者を探し、挑戦してみてもいいのかもしれない。

全国各地にあるキャリアアップ支援事業者がそれぞれの方法で、夢の実現をサポートしてくれるはずだ。

[bizSPA!フレッシュ編集部]

[参考]
※ リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(一次公募) 採択事業者一覧 – 経済産業省
※ リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(二次公募) 採択事業者一覧 – 経済産業省

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