bizSPA!フレッシュ

「こんなイカサマをやるために記者になったんじゃない」業務の半分以上が囲碁!某業界新聞社の謎|職場ミステリー

コラム

わざと負けたとバレないようにする巧妙なテクニック

「忘年会の季節が近づいた頃でした。来年もよろしくという意味で、取材よりクライアントと囲碁を打つ機会が増え、毎日朝から夕方まで打っていました。しかもクライアントファースト主義のため、接待ゴルフのように手を抜いてわざと勝たせるのが鉄則になっていました。わざと負けたとバレないように巧妙なテクニックの研修が、二日間の日程で行われたのです」

 相手の力に応じて臨機応変に手を抜いて勝たせる。その技を繰り返しレクチャーされた須藤さんら新入社員3人は、週明けに早速クライアントと対戦することになります。上司が傍で見守る中、研修の成果を披露すべき舞台で、須藤さんはふと「こんなイカサマをやるために記者になったんじゃない。正義とは何かを追求する社会派ライターになりたかったんじゃないか」と初志を思い出したのです。

雷に打たれたように「ここは僕の居場所じゃない」と悟る

囲碁 盤面

「すると突然次の一手が打てなくなりました。指が動かなくなったんです。ここは僕の居場所じゃないと雷に打たれたように悟りました

 須藤さんは退席する前に上司に退職を伝えました。同僚の佐藤はその日の朝に電話で会社に退職を告げたそうです。残りの一人はしばらく在籍したそうですが、転職して営業マンに転じ、囲碁を営業スキルの一環として生かしているそうです。

「わざと負けたとバレないように巧妙に仕向ける。このテクニックは営業マンにとって役立つかもしれないけど、記者には意味がないですよ」。

 須藤さんはその後、報道関係のweb版に関わりながら、記者としてのスキルアップを図っています。業界新聞社での経験が将来の展望を考える上で役にたったと前向きに捉えながら。

<TEXT/夏目かをる イラスト/カツオ(@TAMATAMA_GOLDEN)>

あわせて読みたい
>>「笑顔禁止!筋トレ禁止!」地方職員の父親が決めた家族ルールがエグすぎる|変なルール

>>休日にも届く上司からのLINEで「うつ病寸前」に。25歳メーカー社員の悩み

コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。『週刊朝日』『日刊ゲンダイ』「DANRO」「現代ビジネス」などで執筆。
Twitter:@7moonr

おすすめ記事