英国No.1クラフトビール「BREWDOG」。炎上すれすれの奇抜なマーケティングとは
日本市場は「エンタメ」に注目してブランドの浸透を図る
日本には2014年にオフィシャルバー「BrewDog Roppongi」をオープンし、市場拡大に努めてきたわけだが、創業者のジェームズは2008年に「TOKYO」というビールを作るほど、大の日本好き。兼ねてから東京をアジア圏の中でもポテンシャルのあるマーケットとして捉えていたそうだ。
「日本で本格的なマーケティングおよび販促活動をし始めたのは、2021年にアサヒビールと合弁会社『ブリュードッグ・カンパニー・ジャパン』を設立してからです。日本ではまだまだ認知度が低いブランドをどう広め、浸透させていくかをミッションに取り組んでいます」
日本国内でBREWDOGを広めていく上で、名嘉眞氏が注目したのは「エンタメ」だった。
「パンクな精神を大事にしてきたBREWDOGのブランドと親和性があるのは、音楽やカルチャーといったエキサイトシーンだと感じていました。お酒を楽しむオケージョンこそ、ブランドを知ってもらうには最適だと考えたんです」
2022年は日本最高峰のロックフェス「FUJI ROCK FESTIVAL」やLA発の野外パーティ「The Do-Over TOKYO」にドリンク協賛したほか、国内最大のビール×NFTプロジェクト「Crypto Beer Punks」とのコラボキャンペーンを実施した。
野球場にBREWDOGが飲めるリアル店舗も出店
さらに2023年に入っても、ワールドワイドに活躍する人気ロックバンド「MAN WITH A MISSION」とのコラボムービープロジェクトや、埼玉西武ライオンズの本拠地・ベルーナドーム内にBREWDOGのオフィシャルバーをオープン。
ボールパークの中にBREWDOGの店舗を出店するのは世界初の試みとなっている。
「日本は野球人口が多く、スポーツ観戦というエンタメに寄り添った販売チャネルを設けることで、お客様との新たな接点を作り、ブランド認知やファンの獲得につなげていければと考えています。日本におけるクラフトビール市場規模はまだ小さく、いかにファンを作れるかが鍵になると思っています。今後もBREWDOGの世界観と合うコミュニティとコラボしたりと、地道にファンの裾野を広げていきたいですね」
4月10日からは本国で人気を集めるフレーバー「HAZY JANE GUAVA(ヘイジージェーン グアバ)」が新たに発売される。
名嘉眞氏は「新商品を出せばいいというわけではなく、いかに消費者の心を掴めるかが重要になる。これからもBREWDOGのブランド認知度向上ひいては、日本全体のクラフトビール市場を盛り上げていきたい」と意気込む。
国産のクラフトビールメーカーでは、「よなよなエール」や「水曜日のネコ」などを手がけるヤッホーブルーイングが有名だ。
また、大手メーカーのキリンも「SPRING VALLEY 豊潤<496>」を発売し、好評を博している。こうしたなか、BREWDOGは少ないパイを奪い合うのではなく、日本のクラフトビール市場全体が活性化するようにビジネスへ取り組んでいくそうだ。
今後の動向に注目していきたい。
<取材・文・撮影/古田島大介>