外資系産業医が明かす、今年も「過労死のニュース」がなくならない原因
長時間労働は疲労を蓄積する
長時間労働は疲労の蓄積に繋がります。
そして、疲労が高まると、健康を害する確率が高まります。私の過重労働面談では、昨年は約13%にメンタルヘルス不調だけでなく、たまりすぎた不平不満・ストレス、口唇ヘルペスやめまい、腰痛の悪化などの心と体の健康障害リスクを感じていました。
長時間労働が過労による病気や過労死になるには、さらなる疲労の蓄積があると私は考えます。個々人の疲労度が大きく左右するのです。残業時間が短くても病気になる人もいますし、残業時間が多くても大丈夫な人もいます。
そこには労働時間の長短では説明しきれない要素があるのです。
疲労度は主体的な感覚なため、人それぞれ感じ方は異なり、取り扱いが難しいです。同じ残業時間でも、潰れる人、潰れない人が出るのは、この疲労度が心身の健康障害に繋がるか否かの違いでしょう。その違いはどこにあるのでしょうか。
疲労度を左右する個人の資質素質と職場環境
その要素は、「個人の資質素質」と「職場環境」の2つだと私は考えています。
個人の資質素質とは、各社員の身体的な体力(元気度)、精神的なレジリエンス(忍耐力)などの他に、仕事に対するやりがいも含みます。
やりがいとは、一人ひとりの社員が仕事で自己成長を感じているか、職場からの評価を感じているか。時にはなぜ自分がその職場で働いているのか、その意味を認識しているかということです。
ベテランであっても周囲の評価が感じられている場合は、自己成長をさほど感じなくてもやりがいを感じることは可能です。やりがいを感じているときや自分の成長を感じているときは、人は多少の長時間労働でも疲労に負けずに過ごせます。
職場環境とは、一般的な職場環境のハード面だけでなく、チームワークやサポートのある職場なのか、残業が多いのは皆なのか自分だけなのか、上司は理解があるのか否かなど、周囲との関係性や不平不満の程度も意味します。