なぜ欧米より日本で「面白い間取り図」が生まれるのか?在英建築史家からは驚きの理由が
増改築が容易だった木造建築
――ヨーロッパには面白い間取り図がないのではなく、間取り図自体がなかった、これはわかりました。でも、なぜ日本には面白い間取り図がたくさんあるんだと思いますか?
遠山:これもいくつか理由はありそうですね。まず、先ほど少しお話ししましたが、「寝室とリビングは別」という欧米の発想が入ってきて、短期間で強引に居間と寝室を分けたり、和室を無理に洋室風にしたため、ちょっとヘンテコなものになっていったというのがあるのではないでしょうか。
それと、欧米の家は石やレンガでできていますが、日本の古い家は木造ですよね。そうすると、石やレンガに比べて壊しやすく作りやすいので、増改築が容易だった。増改築が容易ということは、必要に応じて自由に拡張が可能であるということ。でも、そこに建築のセオリーはないので、増改築を重ねた結果、どんどんユニークなものになっていったということでしょう(笑)。
ヨーロッパ発の面白い間取り図が生まれる?
――こうして間取り図が一般的になってくると、今後はヨーロッパからも面白い間取り図が出てきそうですね。
遠山:ポテンシャルは高いですよね。ヨーロッパには、歴史ある建築物を残そうとする風潮があって、スクラップアンドビルドが難しいんです。なので、馬小屋やボートハウス、公衆トイレなんかでさえ、住居目的の建物に生まれ変わっています。それと近年は、人口の減少や老朽化によって、教会や発電所といった大型施設も住居にコンバージョンされていますね。
本来、住居には適さないような建築物がいったいどう生まれ変わっていくのか、どんな間取り図になって公開されるのか、とても楽しみです。
<聞き手/森岡友樹 編集/bizSPA!取材班>
【遠山晃望】
1980 年、京都に生まれる。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)美術史学博士号取得。専門は日本美術史・宗教建築史。在英邦人研究者の立場から、日本文化を探求している。