“業界一強”ABCマートに直撃、強さの秘訣と「駅近に複数出店」するワケ
上野店と渋谷店のライバル構造があった?
また、当時からABCマートの店舗で根付いていたのが「接客至上主義」だった。販売スタッフのノルマはなかったものの、スタッフ同士が売上を競い合う風土が生まれ、それが接客力や販売力の向上につながったという。
「これは今でも浸透している風土で、レジ横のPCでは販売スタッフごとの売上ランキングがいつでも見られるようになっているんです。ただ、シューズを売るだけでなく、リペア商品も合わせて付帯販売することで客単価を上げていく。こうした意識が販売スタッフに芽生え、『一番売上を上げるスタッフがかっこいい』というステータスが確立されていきました。
売上を立てる力があれば、昇進も早くなり、自分の思った通りのお店づくりもできる。上野と渋谷の店舗間で売上を競ったりと、この頃はいい意味で“対立構造”が生まれ、スタッフ同士が切磋琢磨できる環境を醸成できていました」
駅近や大通り沿いに複数出店するワケ
競合他社は郊外型店舗やロードサイト店舗が多かったなか、ABCマートは上野と渋谷の店舗を皮切りに、都心部や地方の主要ターミナル駅の一等地めがけて出店攻勢をかけていく。さらに、同じ地域に複数の店舗を出店するドミナント戦略をとったのも、ABCマートが工夫した一手だったという。
「その地域の近隣に店舗をいくつも構えることで、売り逃がしを減らし、機会損失を限りなく抑えることができるわけです。
お客様の求める靴のサイズやカラーがその店舗になくても、近くの店舗にあれば『別の倉庫に在庫があるので、持ってきますね』とお声がけし、近隣の店舗にスタッフが走って在庫を取ってくるので、社内では“走りの店間”と呼ばれています。このように地域で在庫をシェアすることで在庫効率が上がり、バックヤードの圧縮にもなります。
最近ではリアルタイムに全国の在庫を共有することで、もしお客様が求める在庫が店舗になければ、倉庫からお客様の自宅に直接送料無料で配達するサービス『iChock(アイチョク)』を提供しています。このような仕組みを作ることで、機会損失を防げるのはもちろん、スタッフの個人売上にも直結する、良い相乗効果を生み出せていると考えています」