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初挑戦はわずか1年で撤退。女性が行列「東京たらこスパゲティ」出店の裏側

ビジネス

女性のための和食ファストフード店を具現化

東京たらこ

2022年4月にオープンした東京たらこスパゲティ 南池袋店

 アークランドサービスは2016年7月に持株会社制へ移行し、同社の主力業態「かつや」とその他レストラン事業をそれぞれ会社分割した。チェントペルチェントやマンゴツリーは出店先が商業施設へ寄っていたこともあり、人材育成にかけるコスト負担や店舗展開力の欠如といった課題を抱えていたという。

 かつやのように立地に縛られず、かつ親しみを持ちやすいメニューを扱った業態開発が求められていたのだ。実はこの頃に、「今の東京たらこスパゲティに通ずる構想がすでにあった」と中島氏は言う。

「かつやは働く男性をターゲットにした業態だったので、それとは違う別のベクトルで仕掛けていこうと思案していました。そのなかでたどり着いたのが『女性のための和食ファストフード店』というコンセプトでした。ただ、そこからどうやって先鋭化させていくか考えるのに2年間かかりましたね。タイ料理や和風スパゲティなどは競合も多く、埋もれてしまうのは目に見えていました。

 女性がひとりでも入りやすく、今までとは異なる新しいスタイルのお店を試行錯誤していくなかで、和風を象徴する『たらこ』に注目するようになりました。そして、東京たらこスパゲティがオープンする半年前から本格的にオープンへ向けて走り出したんです」

プロモーション費用は全く使っていない

東京たらこ

東京たらこスパゲティのメニューの中でもシンプルな「素たらこスパゲティ」

 数年越しに、女性向けの業態開発を推進するゆえ、オープンまでの数か月は抜かりなく仕込みをしていったそうだ。まず、渋谷宮益坂にあったかつやを改装するための工事の段階では、あえて看板だけを「かつや」から「東京たらこスパゲティ」へ架け替えを実施。道ゆく人の目に留まるよう、工夫を凝らしたという。加えてインスタグラムを開設し、メニューの内容を投稿することで情報を小出しにしていったそうだ

「宮益坂でお店を構えること自体が広告になると考えていました。そのため、店舗名を記載した『東京たらこスパゲティ』の看板をいち早く設置しました。

 あえて店舗やメニューの情報も出さないことで『何ができるんだろう』と生活者やリサーチャーの方に関心を持ってもらうような狙いを定めたんです。こうした仕込みもあって、オープン前からテレビの取材も受けるくらい、“東京たらこスパゲティ”という店名に可能性を感じていました。店名を見れば『たらこスパゲティ屋さん』だと想像できるからです。

 そんななか、オープン前日にあるインフルエンサーの方が『なにやら東京たらこスパゲティという面白いお店が渋谷宮益坂にできる』とツイートした内容が、11万いいねを集めました。意図したわけでは全くありませんでしたが、綿密に仕込みを入れ、話題喚起に努めてきたことが功を奏したのではと感じています」

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