日本にも「北朝鮮スパイ」はいる。大手テレビ局Pに聞いた“暴露小説”の中身
出版を会社に報告したら…
――本がでることは会社には伝えているのでしょうか?
川嶋:もちろん言いました。言ったんですけど、自分としては日々の仕事とは別の角度でアプローチしたものとして報告しました。それもあって、会社の名前や自分の名前を出さずにペンネームで執筆しました。
――反応はいかがでしたか?
川嶋:みな、協力的でした。「おもしろいことやるんだね」と言ってくださった上司もいました。
コロナ禍で空いた時間を執筆活動に
――執筆にはどのくらいかけたのでしょうか?
川嶋:草案が2年前にできて、そこから1年くらいかけて書きました。草案からガラッと内容を変えたりして、大変でしたね。何度も変更していて、「もういい加減修正はやめてほしい」と言われたくらいです。知り合いのテレビのプロデューサーから案ももらったりして、それを元に編集さんにアイデア出しをしたら、「そのアイデアは本にする場合はありえない」と言われてしまったり。テレビプロデューサーの感覚と、本の編集者の感覚は違うんだなということもわかって面白かったですね。
――執筆の時間はどのように確保したのでしょうか?
川嶋:コロナ禍で時間ができたので一気に書き上げた感じです。コロナ前は、日々、飲み会など交流が多くて忙しく、執筆の時間を確保するのが難しかったです。しかし、今回緊急事態宣言などの影響で、飲み会などの交流が全て途絶えたので、自分を見つめ直す時間ができ、執筆するにはうってつけの時間だったかなと思います。
<取材・文・撮影/山崎尚哉>
【川嶋芳生】
1970年生まれ。大学卒業後、某大手テレビ局入社。報道記者として海上保安庁を担当。2001年に東シナ海で発生した朝鮮民主主義人民共和国の不審船による九州南西海域工作船事件のほか、2017年大陸間弾道ミサイル発射など、多くの事件や事変を担当。アメリカ連邦捜査局(FBI)捜査官を取材したほか、金ファミリーや北朝鮮の現役工作員へのインタビューを敢行。現在、旧東ドイツの諜報機関・シュタージに関する取材も続けている現役のTVプロデューサー