日産「シーマ」が生産終了へ。消滅の理由は、したたかな“脱ゴーン”戦略にアリ
売上高は回復したが営業利益は減少
当時、日銀は現在とは真逆で円高を容認する立場をとっていました。そのため、円高は長期化するとみられていました。国内で生産した車を海外に輸出するよりも、現地生産のほうがメリットは高くなります。海外に生産拠点を移した背景には、為替要因も潜んでいました。
そして、2011年度から2016年度までで51の新型車を投入すると発表しました。生産設備を拡大すると同時に、車種も広げる戦略をとったのです。日産は新興国を攻略するにあたって、あらゆる需要に応えるため、車種の絞り込みをしたくなかったものと考えられます。
この計画により、売上高は回復しましたが、営業利益率は下がる結果となります。
新興国でのシェア拡大を狙うも裏目に
販売台数の拡大に固執した場合、価格を度外視するために利益率は下がる傾向があります。特に新興国でのシェア拡大を狙ったため、低価格で販売する必要がありました。
この時期、日産は新興国での生産拠点拡大に大型の投資をしています。そのため、新型車の開発力が落ちていました。販売する車は車齢の長いものばかりとなり、消費者の目には魅力の薄いものと映ります。しかも、ヒットモデルを世に送り出すことができません。
日本国内において、2021年の車種別販売台数ランキング第1位はトヨタの「ヤリス」。2位から4位までをトヨタ車が占めています。高級車である「シーマ」が飛ぶように売れていたかつての日産の強さは、見る影もありません。